今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 714)かき揚げ天そば


かき揚げは、天ぷら界のごった煮である。何をかき混ぜて揚げるのか、店ごとにいろいろですが、立ち食い界隈では玉ねぎや人参が主力のことが多い。


専門店ではコースの〆に天ぷら茶漬けとしてかき揚げを出す、らしいけど縁がないので所詮は耳学問である。新宿すずやのトンカツ茶漬けみたいなものかな。


まあ、かき揚げの主戦場は間違いなく立ち食いそば。かき揚げ丼もあるけど、やはりそばが基本でしょう。老舗の立ち食いそばで、朝の揚げたてをいただく。


こちらのかき揚げは、カリカリではなく、フワッとした仕上げ。ひと口かじれば、玉ねぎの甘みが口に広がり、どことないエビの香ばしさがわかる。


そばはキリッと角が立ち、ツユはダシの優しさであふれる。ふわふわのかき揚げはツユを吸ってジューシーになり、食べてゆくと中のほうはサクサクしている。


天茶を食べたことはないけど、かき揚げとダシのハーモニーは、絶対おいしいヤツやん。いつかきっと食べてやると思いつつ、そばを食べ終えて下膳する。


ごちそうさまでした。

定食春秋(その 422)赤飯幕の内弁当

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お赤飯が食卓に並ぶと、少し嬉しい。モチモチの食感、小豆の香り、プチプチの黒ゴマに、味の決め手の塩。年中行事に関係なく、たまに食べておきたい。


さて、本日の日替わり弁当はお赤飯。なんだろう、節句も過ぎたし、店の関係者にお祝いごとでもあったろうか。とはいえ、ご相伴にあずかるとしようかな。


箸を割り、付属の味噌汁をすすりつつ、陣容を確認。ゴマのふられたお赤飯の脇には揚げ物、鮭、煮物、漬物、紅白が鮮やかなカマボコもあり、にやける。


お赤飯に箸を入れれば、あでやかな餅米は割り箸をおらんばかりにムチムチ。口の中でほどけつつ、ひと粒ずつ主張するのはさすが。噛めば甘く塩もきいてる。


ここでハムカツにソース、天ぷらに醤油をかけてオカズヂカラを上げ、モリモリ食べてゆく。辛口塩鮭が実に塩っぱく、お歳暮でいただいた幼少期を思い出す。


ザ・和食に文句なし。ワンコインなれども、江戸時代の殿様くらいいい食事をしているだろう。ケの日が続く平日に差し込む、ハレの日のご馳走に大満足。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 713)カレー肉南蛮そば feat. C&C in 高幡そば


土曜の夜に家でカレーを食べて、日曜の昼ににカレーうどんで余剰分を消費する。メインはカレーライスのはずなのに、どうにも不思議と麺類のほうがしっくりくる。


そう、カレーと麺の相性は悪くないけど、飛び跳ねるリスクがあるのか、サラリーマン界隈では人気は沸騰しない。肌寒い日にカレー南蛮を食べるかな、くらい。


さて、こちらは京王電鉄の眷属のコラボ、高幡そばにC&Cのカレーがかけられたひと品。カレー、肉、南蛮。食べる前から想像のできる名づけがたまらない。


休日なので、多少の飛び跳ねなど気にしない。とんちんかんちん、気にしない。年齢がバレる連想をしつつ、カレー南蛮とご対面。マスクを外せば、いい香り。


そば屋のカレーと異なり、C&Cのソースはスパイスが活きている。まずは丼ぶりを持ち上げ、カレーとツユの境界線あたりをゴクリと飲めば、辛くておいしい。


そばをそろそろと持ち上げてズルリ。鼻に抜けるダシとスパイスのハーモニーは、井上陽水奥田民生のような、異種格闘技のごときコラボで、ほおっと息をつく。


そこに七味を振りかけて、辛みと香りを増し増しにして食べてゆく。こちらの名物・鳥中華の看板である鶏肉と、C&C由来の豚肉が口の中で踊っております。


シャキシャキの白ネギが食感のよいアクセント。徐々にツユとなじむカレーソースの変化を楽しみつつ、あっという間に完食。散歩のおやつにベストブレンドです。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 712)はぜ天そば


何にでも見境なく飛びつくのは、人の世ではあまり上品とはされない。思慮深くエレガントに振る舞うのが望ましく、若さゆえの血気も、時と場合によりけり。


で、簡単に釣れるハゼ類から、何にでも飛びつくさまをダボハゼと揶揄する。ハゼ自体は江戸前の天ぷらにもなる上品な魚だけど、えらい損な表現ですね。


はぜ天は江戸前の天ぷらにはあるけど、そば界隈、立ち食い界隈にはあまりみられない。お上品さやら、食べごたえ、流通面などいろいろ裏があるのだろう。


こちら立ち食いの老舗では、通年ではぜ天が食べられる。ありがたい限りで、たまに食べると自分が大人になったような錯覚におちいる。今日がその日だ。


ダシのきいたアツアツのツユをゴクリ。カツオがハゼの脇役に回っていますが、それもまた味わいのうち。茹でたてのそばは香り高く鼻に抜ける香りを楽しむ。


はぜ天は淡白で、天ぷら油とダシの旨みと調和して、そばのほのかな味わいとトーンが揃っている。七味をいくらか振ると、全体がまとまって、嬉しい限り。


それこそダボハゼのように、そばをかきこみ、ワカメを喰み、ネギを咀嚼して、最後にはぜ天の尻尾まで食べちゃえ。水を飲み干し店の奥に下膳したら大満足。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 711)冷やしむじなそば


梅雨は嫌だけど、冷やしの季節と思えばまだ我慢できる。貼り紙をみれば「冷やし始まりました」と奥ゆかしいニュアンスで、たぬき、きつね、むじなが並ぶ。


初物だし悩むくらいなら、むじな。たぬきの油っけときつねのジューシーさを堪能できる。お隣の常連風は「昨日と同じ大冷やむじな」とのこと。わかるわ〜。


蒸し暑いなか、熱いお茶を飲む。心頭滅却すれば、なんて上等な精神は持ち合わせていないけど、冷たいそばのプレリュードとして、熱い番茶がありがたい。


見目麗しきむじなそば。確か、冷やし中華のように酸っぱいツユだったな。まずはそばをそろそろすすれば、舌を刺す酸味と、鼻に抜ける旨みがたまらない。


揚げ玉はキシキシ歯ごたえよく、お揚げは甘辛く炊いてある。きゅうりの清涼感とともにかきこめば、夏だな夏だな夏なんだな、と甲本ヒロトの声が聴こえる。


途中でワサビをとけば、さらに嬉しい味の協奏曲。ズルズル食べ終えたら、そっと器を持ち上げ、ひと口だけツユをゴクリ。目の覚める酸味を番茶で洗い流す。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 710)朝カレーセット in 富士そば


最近、朝食をとらない。朝から食べると胃もたれするし、午前中眠くなる。朝食論者は血糖値を上げろというけど、そんなのはオロナミンCに任せておけばよい。


とはいえ少し前まで朝からかき揚げそばを食べていたので、おいしさは忘れていない。さて本日は通院で絶食の朝、採尿、採血を終えて結果が出るまで40分。


そうだ富士そば行こう。あたかも京都へ行くように、いいことを思いついたかのように富士そば行き。いい匂いをさせ、病院の待合室に戻るのもなんだけどね。


券売機をみれば朝セットがある。10時までの販売らしく残り10分、限定モノに弱いので、食べたいメニューではなく、お得なメニューにあっさり心を奪われる。


かけそばとミニカレー。これで380円なんて、頭がクラクラするほどお値打ちです。そば屋のカレーはおいしい、これは普遍的な価値観で、期待が高まる。


かわいいサイズのカレーライス。しっかりした焦げ茶色はコクの証。ひと口食べればしっかり辛く、ダシの気配も濃厚で思わずにっこり。別添の温玉を加える。



スープ代わりのミニかけそばは、富士そばクオリティ。ズルズルすすり、ツユをのみ、ほっとひと息。しみじみしたおいしさは、控えめに言ってサイコーです。


食べ終えると検査結果まであと20分。この上ない有効な時間の使い方に、自ら感心する。メタボも怖いけど、食べたいものを我慢しない程度の健康がいいよね。


ごちそうさまでした。




麺喰らう(その 709)冷しちからそば

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AMEMIYAのネタにもなった「冷やし中華はじめました」は、初夏あたりの季語だろうか。季節的には肌寒い梅雨の前だけど、陽射しが強くなる頃合いだな。


時を同じくして町そば屋でも冷やしが始まる。冷やし中華と同じ酸味のきいたツユ、ザルと似た濃いめのツユ、温そばと同じダシ系のツユなど、さまざまです。


こちらは冷やしメニューが豊富で悩んじゃうね。たぬき、きつね、山菜、ちから、ムジナ。どれも捨てがたいけど、ボリュームを求めて、ちからにしよう。


やってきた冷やしそばは、中央にパイナップルの輪っかが鎮座しており、そうそうここのはそうだったと思い出す。見目麗しいというか、賑やかなひと皿です。


まず具材をかき分けてそばをズズズ。酸味のない濃ゆい系のツユは、そば粉の香りがよく似合う。ちから部分の揚げ餅をむに〜と楽しむ。この味、唯一無二〜。


例年ながら、具材がオリジナリティに溢れてますね。ツルリ喉越しのよいしらたき、味のよく染みたシイタケ、寿司ネタのような厚焼き玉子。どれもおいしい。


きゅうり、ナルト、ネギはあくまで脇役ですね。紅生姜をふりかけ、ワサビをといて刺激を増しつつ、そばをスルスルとたぐっていく。あゝ清涼感。


ひと通り食べ終えたら、水で舌をリセットして、デザートがわりにパイナップルとみかんを食べる。ツユとあい混じって、甘じょっぱいのが何とも幸せです。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 708)やまかけそ&そばとろ

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野菜はヘルシーであると、なんとなく信じてきた。しかしイモ類は炭水化物が多く含まれ、時に主食に区分される。穀物でないのは茎を食べているからだとか。


小学校の理科のレベルなんだろうけど、腑に落ちるような、落ちないような。ともあれ、そんなイモ類が生食できるのが、とろろ類です。ヘルシー、かな?


こちらの町そば屋さん、とろろそばが3種類もあり、図解されているけどいまいち違いがわからない。とろろせいろはまだしも、そばとろ、やまかけって何だ。


仮にググろうとも、一般論がわかるだけであり「うちの店ではこうです」は示されない。忙しいお昼どきに尋ねるのも野暮、というか小心者なのでできません。


となれば、実食に限る。本日はやまかけを注文してみよう。推測するに、やま=山いもがかかったかけそばとみた。果たして到着すれば、そのとおりでした。


一面のとろろ、緑鮮やかなあおさ、真ん中に鎮座する卵黄。見目麗しい一杯にニンマリしながら、そばを持ち上げてスルスルといただく。当然、ヌルヌルです。


甘辛いツユは、とろろとの相性も間違いない。とろろは思ったより固体であり、ポタポタしたお好み焼き生地を思い出します。あおさの香りがいいな。


七味をふり、卵黄をほどいて、さらに食べてゆく。とろろに徐々に熱が通り、熱くなってゆくのも一興。最後は温そばには珍しいそば湯をいただき、汗をかく。


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で、翌日にそばとろを食べる。イラストからすると、ツユととろろが一体渾然としているかな、と推測するも、到着すれば冷やしやまかけでした。疑問は解決。


味わいは昨日同様ですが、冷やしのぶんツユの甘み、とろろの旨みなどが分析できます。ワサビを溶いて食べれば、口の中はさながら里山の見本市、おいしい。


なぜだか、こちらにはそば湯がついてこない。皿の形状からしても、そば湯向きではなさそうだし、忙しいお昼どきに確認するほどのことでもないかな。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 707)最&強どん兵衛 かき揚げそば

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会社帰り、なんとはなしにコンビニに立ち寄る。そんな人も多いのではないか。しかし、コンビニは意志の弱い我々に蠱惑的な揺さぶりをかけてくる。


コンビニだけで売られるマンガ誌、プライベートブランドのお菓子、パイロット版が居並ぶドリンク類、そしてオジサン心をくすぐる煌びやかなカップ麺。


そんなコンビニならではの、スペシャルなどん兵衛を購入。週末の楽しみに、酔っぱらって夜食にすることのないよう、高い棚に保管して、そのときを待つ。




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さて、待ち侘びた休日のブランチ。果たしてこのどん兵衛には水道水でよいのかとためらいつつ、お湯をわかして、取説をよく読んだのちお湯を注ぐ。


待つこと5分。うどんを待つ妻は8分。通常よりも焦らされたぶん、感動も大きいことだろう。フタをあけ、後のせかき揚げをのせ、戦いの火蓋を切って落とす。


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まずはツユをゴクリ。深い、おそらくいつものどん兵衛より深い。ダシの小袋には、あご、干し椎茸、煮干し、サバ、昆布、鰹節など、絢爛豪華な旨味の数々。


なるほど深みと旨みが出るわけだ、でもしっかりどん兵衛風味なのがうれしい。七味も「浅草やげん堀」とやらで、振りかけてみればやたらキク。


そばはしっかり太く、さすがに香りはうすいけど食べごたえ十分。かけ揚げも、表面もっちり、中身はサクサクして、玉ねぎの甘み、エビの風味は立ちそば級です。


という間に、妻のうどんもできあがり、ツルツル、ハフハフいそがしく食べている。カップ麺としては値がはりますが、夫婦のブランチと思えば破格の安さ。


子育てもひと段落して、いい意味で肩の力を抜いて、ジャンクなごはんというのも悪くない。というか、むしろ望むところ。今度は、ハンバーガー食べよう!


ごちそうさまでした。



定食春秋(その 421)ねぎとろ丼

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お昼時の定食処、小上がりもカウンターも満席です。黒板メニューはいろいろあるけど、揚げ物は時間がかかりそうなのでお刺身にするかな、などと思案する。


そこで目についたのがねぎとろ丼。ふわふわと甘いネギトロに、鮮烈な醤油をひと回しかけ、ホカホカご飯をかきこむ。そう思ったら矢も盾もたまらず注文。


ネギトロとは不思議な響きだけど、ネギとトロではなく、マグロの身を骨からこそげ取る=ねぎ取るからネギトロだという。以前も調べたけど、ホントかな。


https://socius-lover.hatenablog.com/entry/2019/07/18/071300


ともあれ、久しぶりの一杯を堪能しよう。薄紅、緑、白のコントラストが鮮やかで、目も楽しませるのが食事なのだと再認識。まずは味噌汁をズズズっと。


さて、ワサビを醤油で溶いてねぎとろに回しかけ、ネギを上にのせる。大葉はパクリと食べてしまい、空いたスペース全体にねぎとろを押し広げたら準備万端。


箸を深く差し込んで、ご飯ごとねぎとろをほおばる。ふわふわと甘いマグロの脂に、塩っ気がよく似合い、ねぎのショコショコした歯ごたえもおいしい。


食べながらも「ねぎ取る」について思う。「ねぐ」をググってみれば「神に祈る、ねぎらう」なんて意味もあり、こちらの線はないだろうかと思う。


ともあれ、丼ぶり飯をかきこみ、味噌汁をすすり、小鉢を突く。カウンターのなかでは大将がひたすら揚げ物と格闘しており、その香りもまた、オカズとする。


ごちそうさまでした。