今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 824)かけそば in 箱根そば

 

かけそば3部作の第3弾、箱根そば。なんとなく街そば屋さんではかけそばを頼みづらく、立ち食い系ばかり攻めています。堂々と食べればいいんですけどね。

 

あまり需要がないのか、券売機でかけそばが見つからない。ようやく見つけたかけそばですが、ミニかき揚げのせの朝そばとの差額はわずか20円しかない。

 

欲望をグッと堪えてボタンを押し、食券を提出する。こちらの店舗はツユが機械で注がれるので、水を汲みつつ横目で見物する。おや、ワカメあり、嬉しいな。

 

普段のそばと異なり油ものから滲み出す油がなく、丼ぶりの深さと相まってツユが澄んでいることがよくわかる。摩周湖の透明度を思い起こすとは言い過ぎか。

 

ツユはダシとカエシのバランスがよく、かすかに甘みを感じる。そばはやわめで、ひと口すするごとにお腹が温まるのがよくわかる。七味がよくききます。

 

かけそば3店目ですが、どこで食べても七味の香りと辛味を強く感じます。さらにいえば、具がないのですすりやすく、ネギの香味が丁寧に味わえますね。

 

退店するとき、杖をついたおじいさんがかけそばボタンを押しているのを見かける。朝ごはんかな、油っけのないかけそばがちょうどいいのだろうな。

 

派手な具材に意識がいきがちなそば界隈では貴重なかけそば3部作でした。ただ物足りなさが残るのも事実、かけそばは老いらくの楽しみにとっておくかな。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 823)かけそば in 深大寺門前そば

 

かけそばの食べ比べ、2日目。独立系の立ち食い店を訪問する。朝セットこそないけれど、お得な揚げ物類を泣く泣くあきらめて、あえてかけそばを注文。

 

注文すると、おかあさんが袋からそばを取り出して湯通しを始める。セルフの水を汲む間もなく、すぐに呼び出しがかかり、330円を支払って恭しく受け取る。

 

かなり湯気がたち、アツアツが窺える。ひと口ツユを飲めば濃い見た目ほど塩っぱくなく、少し酸味が感じられ味醂がきいて甘い。そばをすすればよくからむ。

 

クオリティにこだわるより、安くてそこそこを目指す店のスタンスは嫌いではない。そば粉何%かはしらないけど、ざっかけないそばとツユの相性は満点です。

 

ネギは不揃いで、業務用を仕入れたのではなく手作業だとわかる。七味をふれば香りがたち、ピリリと辛みがストレートに伝わってくるのはかけそばならでは。

 

そばを食べ終えた奥様風は、おみやげにするのかおにぎりを持ち帰りで買い足している。カウンターでは常連さんがおかあさんとの会話を楽しんでいる。

 

地に足のついた、街並みに溶け込んでいる店は存在がありがたいですね。店の片隅にあるキッコーマンの一斗缶、こいくち。これが味の秘訣なんだな(笑)。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 822)かけそば in めとろ庵

 

かけそばと聞くと「清貧」「節約」「吝嗇」が思い浮かぶ。「一杯のかけそば」ブームもあったし「タネ物が食べられない経済事情」が背景に見え隠れする。

 

実のところ、朝に小腹がすいて温かいダシが飲みたいけど油物は避けたい。アラフィフにはそんな日が往々にしてある。まさにそんなときのかけそばである。

 

ミニかき揚げそばとの差額は数十円。経済事情ではなく食べたいからかけそばを注文するのだ。そんな矜持を誰に伝えればよいのか、まずは食券を提出する。

 

ともあれ、水を汲む間もないタイミングで「かけ、のお客さま」との呼び出し。誰も気にしていないけど、なんとなく気恥ずかしい。自意識過剰オジサンだな。

 

かけそばをしげしげみつめると、ネギがキービジュアルであることに気づく。完全な具なしではなく、ネギは青山テルマばりにそばにいるよ、ということか。

 

まずはそばをズルズル。朝イチだから角が立ち、ややボソボソした食感。立ち食いのそばはこれでいいよね。ネギとの食感の違いがいいアクセントになります。

 

で、ツユをひと口。かすかにダシの香りを感じ、塩っぱさよりもやや甘みを感じるのはみりんだろうか。具がないので、真剣にそば&ツユと向き合ってますね。

 

たとえるなら、卵かけご飯のように素材の味を楽しむって感じだろうか。具をいつ食べようかといった煩悩から解放されたシンプルな食事がここにあります。

 

かけそば、いくつか食べ比べようかな。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 821)しおバターコーンラーメン

 

ラーメンの味つけの基本はスープ+タレの組み合わせである。鶏ガラ、昆布、煮干し、豚骨などでダシをとったスープに、タレで味つけをしていく。

 

たとえば豚骨ひとつをとっても、博多のように白濁したスープに塩ダレをあわせることもあれば、喜多方のように澄んだスープに醤油ダレの組み合わせもある。

 

いわゆる昔ながらの中華そばの流れで、基本は鶏ガラ+醤油ダレであり、進化、分化を続けて百花繚乱、群雄割拠の今のラーメン界隈が形成されたのだろう。

 

さて、本日は塩ラーメン。こちらの人気ランクは「辛みそ」「みそ」「チャーハン」であり、醤油すらランク外。塩ラーメンは券売機の隅に追いやられている。

 

塩分はとかく健康の敵にされる。高血圧の原因であり、減塩が正義であるように刷り込まれる。そうかもしれないと思うのが、悲しいけどオレ、中年なのよね。

 

でも、塩ラーメンはスープの味がわかりやすい。味噌汁よりもすまし汁のほうがダシに鋭敏になるように。とか言ってコクを求めてバターをトッピング。

 

まずはスープをひと口。うん、おいしい。みそ味と比べても仕方ない。みんなちがって、みんないい。もやしをスープに浸してベジファーストで食べてゆく。

 

コーンもトッピングしたので、穴あきスプーンがついてくるのが嬉しい。コーンの沈殿を気にせず食べられるし、全ラーメン店に常備してほしいアイテムです。

 

油膜のはったスープに、さらにバターが溶け込んでゆき、徐々に甘いコクが加わるのがいとをかし。ちぢれ麺がよくからんで、馥郁たる香りが心を満たします。

 

このラーメンなら、コショウよりも、七味が似合うかな。途中まで食べて、サラサラとふりかけて味変する。脂っこさを引き締めて、後半戦に向け中弛みなし。

 

クニクニのメンマ、焼き目の香ばしいチャーシュー、ショリショリのネギもすべてバター味をまとい、どこに箸を刺そうとシアワセがついてきます。

 

なんと言っても、甘いコーンと塩バターの相性のよさたるや! 麺を食べ終え、穴あきスプーンで掬い上げてはよく噛んで、3分ほどかけてじっくり堪能する。

 

塩分を意識し始めると、麺類なぞ食べられない。穴あきスプーンの有能性は、具の取りやすさだけでなく、スープとの取り分け機能にあるわけですよ。

 

ちなみに海水の塩分濃度は3.4%で、体液は0.9%。おいしいと感じる汁物は体液よりやや高めの1%前後で、ラーメンスープはさらにお高めの1.5%あたりとか。

 

水飲まなきゃ。

 

ごちそうさまでした。

定食春秋(その 509)マグロとソイの紅白丼定食

 

ソイ。見慣れない黒板メニューを二度見する。soyなら大豆だけど、マグロと紅白丼を形成するとは思えない。タイの書き間違いかなと思いつつ、指差して注文。

 

「紅白丼1つ」そんな注文が通ったので、ひと安心するも、手元の手書きメニューでもはっきりと「ソイ」と書いてあり、ザワザワと心が揺さぶられる。

 

「鮮度抜群のソイ」とはいかなるものか。すぐにググるのも風情がないけど、ここまでノーヒントならば致し方なし。どうやらメバルの一種らしい。

 

ともあれ、メバルだってメジャーな魚ではない。藤子不二雄まんが道を読んだ人なら「海底人間メバル」を知っているけど、メバルは深海魚ではないらしい。

 

ともあれ、ソイ。初見なので味を確認したく、ワサビ醤油を丼ぶりにかけずに、ひと切れ取り上げて醤油をつけて食べる。あっさり白身で、クニクニ食感。

 

なるほどおいしいけど、悲しいかな白身魚の刺身はオカズヂカラには乏しく、付け合わせのやたら辛いきんぴらや、ワカメの味噌汁などを駆使して食べ進める。

 

ここでふと思いつき、醤油皿に刺身を入れて、30秒ほどのアッサリ漬けをつくっては丼ぶりに戻していく。簡易漬け丼は思った以上においしく、ニンマリです。

 

調べればソイはまさに今が旬らしく、貴重な出会いに感謝。とはいえ、日本国内にも知らない食材がまだまだあると思うと、知識の足りなさにゾッとしました。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 820)鴨うどん in なか卯

 

 

普段食べる肉というと、鳥豚牛がほとんどで、いずれも人工飼育されたものである。畜産業と流通業に感謝しつつ、安定、安心の肉を喰らっている。

 

それゆえ、肉の旬といわれてもとピンとこない。すき焼きが冬においしいのは春菊や白菜によるものだし、焼肉が夏においしいのはビールがおいしいからだし。

 

そんななか、鴨肉の旬はまさに今である。シベリアから渡ってきて、体力が回復するのがこの時期なんだとか。そうきくと、にわかに鴨肉が食べたくなる。

 

で、なか卯。チェーン店の鴨肉だから、獲れたてのジビエというわけにはいきませんが、季節限定メニューだし、旬を味わえるのは間違いないでしょう。

 

なか卯は二八そばもおいしいけど、あえてのうどん。程なくやってきた鴨うどんは、ポスターに比べて盛りつけに華がないけど想定の範囲内。味に変わりなし。

 

まずは匙でツユをひと口。普段のなか卯の黄金のダシとは異なり、鴨うどん用の濃いめ、甘めのツユが嬉しい。ユズのさわやかな香りが味の切れを増してます。

 

さて、三種の食感の違う鴨肉とはいかなるものか。団子は見た目でわかるけど、鴨肉は薄切りがくっついており、1枚ずつ剥がしてみる。ムネ肉とモモ肉かな。

 

うどんをすすれば甘辛いツユをまとい、鴨の脂とユズがお互いを引き立て、いうことのないおいしさ。ひと口目なのに、鍋の〆のような旨みにあふれてます。

 

鴨団子はふわふわ。ムネ肉はややパサつくも肉の旨みがわかる。モモ肉は脂の甘みがたまらない。三者三様の鴨肉ジェットストリームアタックに頬も緩みます。

 

ツユのしみた油揚げも、歯ごたえを残す青ネギも、なか卯の麺に対する真摯な姿勢が滲み出ています。このツユ、自販機で売ってくれないかなと思いつつ完食。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 819)力うどん

 

昭和育ちなので、正月にはひたすらモチを食べていた。でも令和の今では、食の多様化だけでなく、自らの加齢による健康志向もあり、あまりモチを食べない。

 

何というか、慙愧の念に堪えない。紅白歌合戦がかつての輝きを失ったように、私のモチへの情熱も失われてしまったのか。まだ50歳にもなっていないのに。

 

のび太のところに初めてやってきたドラえもんも「うまいもんだなあ」と皿を舐めるほどモチを絶賛していた。お雑煮すら一杯しか食べていない己を恥じる。

 

そんなわけで、力うどんを注文。到着までのあいだ、磯辺、きなこ、ずんだ、砂糖醤油などモチの食べ方を考え、やはり生醤油が一番だな、などと思う。

 

焦げ目も見目麗しきモチが2つ。まずはモチをかじれば、サクッとした香ばしさ、そしてむっちりした食感。薄味のダシなのでモチの味がよくわかる。

 

とか言って、実のところモチの繊細な味がわかる舌をもっていない。正直、焦げ目の苦みが一番で、お次はダシの味。うに〜とした食感だけがモチの感想。

 

昔は餅つき機を持っている親戚がいて、つきたてをうんぐうんぐと飲むように食べっけ。思えばアンコやきなこの味を楽しむもので、モチは麺代わりだったな。

 

ともあれ、ネギやワカメはあれども、ほぼ炭水化物オンリーのランチタイム。たまにはいいよね、と自分に言い訳しつつ、ズルズル、ムニムニと完食です。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 818)トムヤムラーメン

 

世界三大スープは、トムヤムクン、フカヒレ、ブイヤベース、ボルシチという。三大なのに4つあるのは、それだけ選ぶのが難しいからとか。なるほどね。

 

ともあれ、どれも食べたことはあるかな、程度。カップヌードルにもラインナップされているトムヤムクンラーメンが比較的なじみがある気がする。

 

で、東南アジア料理店にて、トムヤムラーメンを注文する。調べると、トム=煮る、ヤム=混ぜる、クン=エビらしい。エビを諦めて、麺を入れたのかな。

 

で、やってきたのは、ばっちりエビ入りのひと品。まあ、ネーミングなんて雰囲気だよね。レンゲでスープを飲めば、甘くて、酸っぱくて、しっかりカライ。

 

海鮮だろうか、深い旨みが感じられ、なるほど三大スープは伊達じゃない。平べったい米粉麺がすするたびによく絡んで、唇がヒリヒリといたむ。

 

独特の風味のパクチーも、このスープには不思議と頭を押さえられたように従っている。大ブームになった香草だけど、これくらいの、香りづけ程度がいいね。

 

BGMは、タイ語だか、ミャンマー語だかわからないけど異国感満載です。ズルズル、ハフハフ、ヒリヒリと楽しみ、お腹が温まるころ、無事に完食です。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 817)証城寺そば

 

気分の問題だけど、初物はおいしい。通勤途中にお腹を満たそうと、今年初の立ち食いそば。朝の寄り道というシチュエーションが、おいしさを引き立てます。

 

で、せっかくならマイフェイバリット、たぬき&玉子の「証城寺そば」です。たぬきが月見をする証城寺そばは、栄養バランスもバッチリで、しかもおいしく。

 

開店と同時の到着で、店員さんが店前を掃いている。横をすり抜けてノレンをくぐり「たぬきに、玉子を」と注文する。不思議と玉子にたぬき、ではないのだ。

 

到着した丼ぶり。初物でもあり、箸を割る前に軽く一礼して、まずは、玉子の白身をツユと一緒にツルリといただく。ダシのきいたツユが、心身にしみる。

 

お次は七味をふって、そばをズズっとたぐる。本日の一番客だけあって、茹でたてで角のたったそばは、立ち食いとは思えないハイクオリティ。胃が温まるな。

 

そばとともに口腔を満たす、作りたての揚げ玉も実にフレッシュ。サクサクとモロモロが混在して、食感も楽しい。ニヤニヤしつつ、食べ進める。

 

ワカメを喰みつつ、食事も後半に入るころ、黄身が半煮えになったところで箸を突き刺せばトロリと黄色い旨みが。ツユに溶ける前に、そばに絡めてすする。

 

これこれ、これぞ、そばボナーラ。滋養に満ちた味わいを堪能して、思わずツユも飲み干しちゃう。一年の計は初物にあり、今年もいい麺ライフを送ろう。

 

ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 816)赤いきつね

 

二つ名というものに憧れる。獅子心王リチャード1世とか、独眼竜政宗とか、単なるあだ名よりも格上で、いかにも大物感あふれるのがイカす。

 

卑近な例でいえば、ガンダムの二つ名は色にちなむものが多い。連邦の白い悪魔赤い彗星、青い巨星、黒い三連星など。すべてわかる方は、同年代ですね。

 

で、赤いきつね。言わずもがな、きつねうどんです。マルちゃんのシリーズにも、緑のたぬき、白い力もちうどん、黒い豚カレーうどんなど色にちなむものが多い。

 

赤いから3倍早いということもなく、3分間待って蓋をあける。ドーンと大きなお揚げさんが威容を放ち、ダシの香りが鼻腔を満たす。これぞ安心、安定の一杯です。

 

まずはお揚げをひとかじり、長方形のひと角にキレイな歯形をつける。お揚げは、ついさっきまで乾燥していたのがウソのように、ダシがしみて甘い。

 

 

残るお揚げは、食事の後半のお楽しみ。カップの底にもぐらせて、一気呵成にうどんをすすり込む。いかにもインスタントといったクタクタの麺がうまいっ。

 

丸い玉子は彩りだけでなく、ふわふわと食感のアクセント。ズルズル食べてゆくとお揚げ再び。引き揚げて、ダシをチュウっと吸って、また、ダシに漬け込む。

 

プラスチックの器に口をあてるより、お揚げ経由で味わったほうが、ダシがおいしい気がする。間違いなく勘違いだけど、騙すより騙されたいんだよ、僕ァ。

 

塩分を気にするお年頃だけど、久しぶりの赤いきつねならば話は別です。ズルズルと麺を食べ終え、ハフハフとお揚げをやっつけ、ゴクゴクとダシを飲み干す。

 

ごちそうさまでした。