にぎり寿司というのは、そばと同じく江戸時代のファストフードだったわけで、本来はそんなに気張ることのない食事だったはずで。
でも今では寿司は二極化してしていますよね。
銀座なんかに代表される、座っただけでおいくら万円というような高級路線、これは縁がないほう、来世で会おう。
次に回転寿司に代表される、ひと皿いくらで安心な大衆路線。回転界での格差はあれど、おしなべてお財布に優しい。
その間にあって、なんとなく足が向かないのが、地域に根ざした個人店。にぎりセットは松竹梅とあるけれど、一貫ずつだと値段が不明な、あの手の。
価格体系の不明瞭さにドキドキするうえ、常連さんにお作法を監視されているような被害妄想におちいります。キビキビしたおかみさんがいたりすると、なおのこと。
しかし、ランチタイムならば明朗会計、注文もシンプル。雰囲気がよければ、今度は夜も来てみるか、なんて思うかもしれない。
で、ある晴れた寿司腹のランチタイム、しれっとカウンターの右の隅っこを陣取る。
とりあえず竹相当のランチセットを注文、こういうときは真ん中を選ぶのが正しい小市民。あっついお茶を飲みながら、職人さんのキビキビした動きを見るともなしに眺める。
親の育てかたではなく、性分としてのバカ舌なので、なんでもおいしくいただきます。お寿司ならスーパーのパック寿司でも、十分においしい。
機械がにぎるとシャリがホロリと崩れないだろう? なんて美味しんぼ理論もありますが、それもあわせ呑んだうえで、十分おいしい。
まして今日は職人さんのにぎりたてなんだから、おいしくないわけがない。高まる期待、鳴るオナカ。
やがてエビの頭が入ったみそ汁が到着、カウンターの小皿に醤油を入れて臨戦態勢をとる。左舷、弾幕薄いぞ! なんて思ってほくそ笑む。
さて、やって参りました、わが握り。
左上から時計回りに、マグロ、ブリ、サーモン、イカ、鉄火、カッパ、光り物、エビ、玉子。うん、ランチタイムならば必要にして十分なメンツ。
こうして一堂に会すると、どれから食べようなんて悩むものですが、そんなときはシンプルに右から食べるようにしています。
イカ、コリコリ。サーモン、脂テラテラ。光り物、さっぱり。
ここらで巻き物半分、みそ汁をひとすすりして後半戦に臨む。おっ、エビの出汁がきいてるな。
ブリ、旨味濃い。エビ、プキプキ。マグロ、ねっとり。
うん、どれもおいしい。残りの巻き物とみそ汁をやっつけ、デザート代わりに玉子でしめる。
こう考えると一種のコース料理だな。さすがにそれは牽強付会かな? 最後に残ったショウガで口を爽やかにして、お茶をすする。
ここは宅配が中心なのか、カウンター 7、8 席とテーブルが2つだけ。小ぶりなお店ですが、そのぶん目が行き届いている印象です。
実際に隣のお姉さんは「玉子、ダメだよね?」と言われて「覚えていてくださって」と喜んでましたし。さりげない気配りだな~と感心。
家の近所にあれば、たまに持ち帰りを買いに行きたいと思える、そんなお店でした。また来よう。
ごちそうさまでした。