春の季節にふさわしい桜エビ。あでやかなピンクが啓蟄の候によく似合う。
水族館などでみると、意外と甲殻類ってドス黒いのも多いんですよね。茹であげると鮮やかな赤になるんだけど、あのままでは食欲はそそらない。
そんななか桜エビはハナからキレイな桜色。鮭の身が赤いのはエサによるらしいから、これこそサーモンピンクの素なんですねえ。
そもそも、桜エビのような小さめの魚介類は足がはやい。
兵庫のイカナゴ、金沢のゴリなど佃煮にして日もちするのもあるけど、基本は地産地消だったように思います。
だがしかし、平成の物流進化はすさまじい。
生シラスなんて江ノ島界隈の特権だと思っていたのに、最近ではその辺の回転寿司でも回ってます。ホタルイカや白エビなんて富山からやってきますし。
ありがたい反面、わざわざ足を向けなくなるな、なんて東京住まいのぜいたくですね。
さて、食券を渡して手持ちぶさたに店内を見回せば「茹でたて、揚げたてのため2分程度かります」的な但し書きをみつける。うんうん、丁寧な仕事が頼もしい。
程なく呼び出されて、かき揚げそばをうやうやしく頂戴にあがる。揚げたての油のにおいが食欲をそそります。
主役の桜エビはかぐわしく、何というか、そう、カッパえびせんの香り……自分の言語の貧困さに絶望しながらも、おいしくいただく。
まずはサクサクのかき揚げをガブリ、タマネギの甘みがおいしい。ツユを吸ったコロモで口腔内は大混乱。グラスの水をゴクリと飲み、かき揚げをほぐして、後半戦のお楽しみにツユに漬け込む。
七味をひと振り、ふた振り。アクセントをつけてそばをかきこむ。更科は+20 円。なんとなく、その響きだけでありがたい気がします。
ひとしきりそばをたぐれば、濃いめのツユに元かき揚げ天が泳ぐのみ。箸でかき集めて、丼ぶりを持ち上げ、直接サラサラと流しこむ。
あとで絶対に喉が乾くけど、やめどきが難しいほどのおいしさ。とりあえず、固形部分がなくなるあたりで勘弁してもらう。ふう、ひと汗かいた。
ごちそうさまでした。