自由気ままにその日の気分でランチを選ぶ。実にささやかな幸せですが、リスクも伴います。そう、“晩ご飯とかぶる” 問題です。
あらかじめ決めておけばいいんでしょうけど、スーパーの特売の都合もあるし、天候や雑用など、予定は未定になるわけで。
ただし傾向と対策はあって、準備から片付けまで手間のかかる揚げ物は、平日はまずつくりません。食べる時間も家族それぞれで、揚げたてを味わえるわけでもないしね。
で、チキン南蛮を選ぶ。
揚げる手間、南蛮酢やタルタルの仕込みを考えるとそもそも家庭料理としてはハードルが高く、まずかぶる心配がない。安心の選択肢です。
宮崎の名物ですけど、正直いって、東村アキコの「ひまわりっ」を読むまで、チキン南蛮をよく知りませんでした、っていうか興味もありませんでした。
ああ、鳥の唐揚げにタルタルがついてるやつね、たまに食べるとおいしいよねー、くらいのボンヤリとした認識。おそらく大多数の日本人がそうだと思いますけど。
衣の種類やタルタルの有無などの亜分類もあるようですが、東村によれば大きく、さっぱりのムネ肉派、こってりのモモ肉派に二分されるとか。親しき仲であれ他派閥とわかれば袂を分かつ、そんな対人関係のキモとなる死活問題(大げさ)。
さて、こちらのお店には鳥の唐揚げがメニューにあるのに、わざわざチキン南蛮を名乗るひと皿。こいつは本格派が期待できそうだ。
カウンターの隅を陣どり元気に注文、しばし出来を待つ。後客は「今日はなんにしようかなー」とウキウキで、リピートが多い店はおいしいだろうと自信が確信に変わる。
やってきましたチキン南蛮定食。薄く色づく衣の上には、食べるラー油のようなソースと、ポテポテのタルタルがたっぷりと。
見せてもらおうか、チキン南蛮のおいしさとやらを。
まずはみそ汁をすすり、チキンをがぶり。サクサクした衣に酸っぱいタレ群がよく合います。慌ててご飯を頬張り、もぐもぐタイム。
脂身を噛み締めつつ、こいつぁモモ肉だなと断面を確認。無派閥だった私ですが、今この時をもってモモ肉派に加わりました。
サラダを食べ、チキンをかじり、ご飯を口に放り込んでは、みそ汁をすする。淡々と、しかし確実においしさを満喫。小鉢のコンニャクをいつ食べるかだけが悩み。なんて幸せなひととき。
悩むくらいならとコンニャクを早々にやっつけて、あとはひたすらに食べ進める。晩ご飯とかぶってもいいや、なんて決意できるおいしさです。
こぼれたタルタルを丹念に集め、ラストチキンに乗せてガブリ。大満足の定食に、いつか宮崎に行きたいと思うのでした。そのためにも日常の由無し事をどげんとせんといかん。
ごちそうさまでした。