東京駅は、胸がときめく。
仕事がら新幹線など使わないから、日常的には用事がない。たまの里帰りできっぷを予約に来ると、熱気がムンムンしていて、驚くやら、楽しいやら。
子どもがむずがる家族づれ、出張帰りのサラリーマン、キョロキョロ見回す外国人客。人生のターミナル駅って趣き。かつての上野もそうだったのかな。
さて、みどりの窓口で首尾よくきっぷを手に入れ、食事でもとろうかと思うも、駅近くは人がいっぱいで、とても、とても。
八重洲地下街をふらふら歩いて、エイっと決めたのが味噌煮込みうどん。ビール、おつまみのついたドリンクセットが決め手です。
まずはビールをウグウグと。おいしい。
おっと! 手羽先はコショウのきいたタイプがたっぷり5本。しまった、ドリンク2杯セットにしておけばよかった。これではビールをチビチビやらざるをえない。
ともあれ、手羽先をパキパキとわり、軟骨を噛み砕かんばかりにしゃぶりついているうちに、やってきました真打ち、味噌煮込み。くっビールが足りないぃ。
味噌煮込みうどんは、名古屋めしのなかでも私的にはかなり上位に位置してます。その麺はチクワブのごとくかたく、つゆは味噌味噌しさにあふれています。まあ、好き嫌いはあるでしょうけど。
まずはグツグツ煮えたつ鍋からフタを取り上げ、レンゲでつゆをじゅるり。ダシと味噌のハーモニーがたまりません。おいしいやつだ。
あとは七味をパラリとかけて、フタに小分けしては食べ進める。フタ? そう、フタ。味噌煮込みのフタには穴があいておらず、小分けに用いるのが本場のマナーとかつて名古屋人に教わったのだ。ふふふ。
しかし、あたりを見回せば誰一人としてフタを活用しておらず、皆フーフーいいながら直接うどんを口に運んでいる。あれ?
なんかこっちが世間知らずのマナー違反に思えてきた。ひょっとして名古屋人に担がれたんではないだろうか。京都人がぶぶ漬けどうどす、なんていうみたいに、こちらを見極めたのではないか。
なんていうか、いいようのない違和感。自分が信じていた足元が崩れるような不安感。Englishman in New York ってこんな感じなのかな。
戸惑いはあれど、おいしさは変わらず。残り少ないビールを飲む機会をうかがいながら、順調に食べ進める。途中で信念を曲げることなく、最後までフタが取り皿だ。
玉子をわるタイミングが悩ましいけど、半熟の頃合いで麺に絡めていただく。やがて鍋底がみえるほどつゆを飲み干し、ジョッキもカラになる。
卓上のポットから冷たいお茶を注ぎ足して、グイッと喉をうるおす。至福のひととき。
伝票を携え、レジに向かうあいだも、フタ同志を目で探したものの見つからず。まあ、いいや。なごやん in 東京ってことだわ。でらうまかったで、なんも文句ないわ。
ごちそうさまでした。