今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 22)麻婆豆腐定食

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マーボー豆腐といえば、長らく丸美屋であった。

豆腐一丁とフライパンがあればできあがり。実家では甘口が定番で、刺激はさほど、というかほぼなかった。


つまらないとは言わないまでも、大喜びのメニューではなかった、そんな出会い。


だからか、外食をするようになっても、数あるメニューからマーボー豆腐はなかなか選ばない。中華街へ行っても頼むのはガツンとした肉料理中心で、2 番手には炒飯や麺類を頼んでしまう。


やはり挽き肉では青年の胃袋は満たされない。さらに豆腐も弱い。なんというか、Wink の左だけでコンビを組むような、実力はあるのに華のなさ。失礼かな、でも正直なところ。


本格派マーボーと出会ったのは、おそらくどこかのバイキングの大皿のひとつ。何気なくすくい取り、なんの気もなく食べてみると、想像を超えた刺激に驚きました。


ラー油、花椒の入り混じった香りに、はじめて麻婆豆腐に正対した気がします。コレ、おいしいヤツだ。


それからは折をみて定食や丼ぶりを食べるようになりました。和風だったり、激辛だったり、なるほどひと口に麻婆豆腐と斬って捨てるものではないなと再認識。


さて、この時期にしては肌寒いから、ちょっと汗でもかこうかとサウナがわりに麻婆豆腐を選ぶ。


こちらは石焼きが基本のようで、鈍く光る黒い器に、グラグラと煮えた赤いヤツがやって参りました。


紙エプロン着用を言い渡され、唯々諾々と従っていると、店員さんがおもむろに麻婆豆腐の攪拌を始める。焦げつき防止だろう、かつて丸美屋マーボーで豆腐を崩さぬよう努力したのが嘘みたいだ。


まずはスプーンでひと口。

アッツイ‼︎ダチョウ倶楽部もジモンを置いて逃げ出す熱さですよ、コレ。からさもじゅうぶんで、すでに今日のランチは合格点、花マルです。


しばらくはスプーンで麻婆豆腐を食べては、箸に持ち替えてご飯をパクリとやってましたが、やがてご飯茶碗に余白ができる。


そうなれば方法はシンプル、麻婆豆腐をご飯に適量かけてスプーンでそのままかきこむまでよ。熱い、うまい、からい。野菜サラダで涼をとりつつ、お手製の麻婆丼を食べ進める。


やがて黒光りする鍋底が見えてきて、戦いの終わりを予感する。あとはしっかりおコゲをこそげるだけだ。


サウナ作戦は成功だけど、いかんせんこちらのお店はオシボリではなく、紙ナプキンのみ。

スーツのポケットからハンカチを取り出して汗をぬぐう。午後イチで打ち合わせなのに、大丈夫かなというくらい汗をかく。


ひとかけらの杏仁豆腐で汗を鎮め、グラスの水をガブリ、ガブリ。ただ食事しただけなのに、汗をかいた事実だけで、何かしらの達成感を覚える。

大丈夫か、オレ。これからもよろしくな、オレ。


ごちそうさまでした。