チャーシュー麺を食べる。そう決めたとき、男はロンリーワイルドになる。
途端に眼光鋭く、カカトでアスファルトを鳴らし、肩で風を切る。肉と炭水化物、それだけで OK。
野菜? あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。
などと、日ごろ生活習慣病に怯えるおじさんとは思えぬ断固たる決意。たまにはいいだろう、を隔週くらいで実行するコンニャクの意志。
さて、こちらはチャーシュー麺で有名な新宿の名店。食券機にアルコール類がないあたりに老舗の矜持を感じます。1550 円、4 桁の数字に恐れおののきつつ、カウンターにて到着を待つ。
なんでだろうか、カラダに良いわけはないのに、ときどき無性に食べたくなるチャーシュー麺。
左右を見回せば、男ばかり。カウンターも、厨房も、待ち客も男ばかり。そうか、お前たちもロンリーワイルドなんだな。
などと勘違いしているあいだにやってきましたチャーシュー麺。
大きな丼ぶりにナミナミと注がれたスープ、こぼれないようカウンターからそろそろと下ろす。では、悲願成就でいただきます。
こちらのチャーシューは、大ぶりなことで有名ですが、まさに肉塊と呼ぶにふさわしい。
奥にはみ出したのをうかつに動かすとスープがあふれそうなので、まずは手前から麺をつるり、スープをゴクリ。
麺はクセのない中華麺、スープは和食にも通じるようなあっさり味でゴクゴクいけそう。
でも、巨大なチャーシューのために胃をあけておかねばならず、スープはほどほどにする。
しっかし、チャーシューのぶ厚いこと。手前の2枚もサービス満点だけど、奥のは「枚」ではなく「個」と数えねばなるまいて。
チャーシューに喫水線があるのは不可思議ですが、スープの下に潜む船体もとい肉塊は3センチはあろうかという厚み。超弩級と呼ぶのがふさわしい。
いつもならタイミングを悩みつつ食べるチャーシューなのに、今日は麺、肉、麺、肉と食べ進めても全く揺らがない肉のパラダイス。
アゴが疲れるラーメンなんて、しあわせのかたちそのものですね。
激しい戦いを終え、男の腹は満たされた。鉄を食え飢えた狼よ、死んでもブタには食いつくな。なんて尾崎の叫びも届かぬ中年腹。だが、それがいい。私がスリムになったところで、誰も得しない。
ノドが渇いたものの、麺と肉で水の入る余地がない。ここまで腹くちくなると一駅歩こうなんて殊勝な心がけもなくなる。まんぷく問題は時間が解決してくれるだろう、しばし待て、ノドよ。
ごちそうさまでした。