たまにはシンプルな朝ごはんが食べたい。
米ならば塩握り、トーストならばバターのように、しみじみと朝の胃をいたわってあげたい決意。ほんと、最近は迷惑かけてるし、胃に。
で、かけそば。一杯のかけそば。
独り占めだからとくに感動は呼ばないけど、かけそば。清貧にして孤高、侘び寂びの世界の住民、かけそば。
自分の決意に胸がおどるも、指はついついおトクないなりセットを選ぶ。意志の弱いオレめ! でもよくやった。
さて、かけそば。普段は少なくともたぬきを選ぶので、久しぶりだな。ネギは、具材にカウントされないんだろうか、などと思いつつまずはツユをゴクリ。
甘めのツユがしみる。胃だけではなく、こう、大げさに言えば、なんというか、ただれた人生にしみる。つまりは、おいしいってコト。
途中で七味をかけると、はっきり味が変わる。具材がないからこそわかる繊細な変化。普段は辛味しか感じないけど、風味がよくなるのが認識できる。
そして、おいなりさんをパクリ。甘じょっぱい油揚げに包まれたちょっと酸味のきいたごはん。
ちょうどふた口サイズなのが、おいなりさんの奥ゆかしさ。しばらく咀嚼して、そばツユで流し込む。
あとは心穏やかに、そば、おいなりさん、ツユと食べ進める。かけそばゆえの迷いのなさ、静かな水面、悟りの境地。
食べ終えると、いつも以上の満腹感。ゆっくり食べようと意識したのがよかったのか、胃も喜んでいる気がする。もう、胃液出しすぎるなよ。
ごちそうさまでした。