揚げ物でもいけそうだな〜なんて、胃腸の具合のいい日は、店選びも足どりが軽い。脳内の定食地図を広げてアゲアゲな店をサーチ。
そこで選んだのはミルフィーユとんかつ。なんとなく得体が知れず、頼んだことがなかった。いつも看板に書いてあるのに、文字通りの食わず嫌い。
いかんいかん、人間、それでは縮こまる。
たまには新たな一歩を踏み出さないと、自分の行動半径だけで物ごとを判断する偏狭なオジさんになっちゃうからな。などと、大仰なことまで考えたりする。
ところで、ミルフィーユってなんだ?
イメージだとパイが層になってる感じで、割るとモロモロ崩れて、食べにくい印象。おフランスの菓子らしいけど、積極的に食べた記憶はない。
などと考えつつ、セルフサービスのコーヒーを淹れたりしているうちに定食が到着。当たり前だけど、ぱっと見はトンカツ定食そのもの。
まずはみそ汁、具はワカメのみだけど、ダシがきいてるネ。いつもの習慣でベジファースト、トマトが冷たくておいしい。
小瓶でついてきたソースをかけて、まずは右端をパクリ。カリカリと食感がいいのは、端っこゆえの愛嬌。
厚切りのヒレやロースのような肉を噛みしめている感には欠けるけど、薄切りだと豚肉の味そのものがよくわかる、気がする。
今度は左の端っこを塩、コショウでパクリ。うん、さらに豚肉の味がよくわかる。旨味と野生味の、やや旨味寄り。
3〜5 層の肉の地層が、細かいパン粉でからりと包まれていて、各層に溶けた脂がはさまれているのが目新しい。
角煮とか、酢豚とか、豚は厚切りをガブリとやるのが醍醐味だけど、歯ごたえが独特なミルフィーユもやるもんだネ。
みるみるうちに残るはふた切れ。ここで未使用のからしを多めにどっぷり。
すると鼻に抜ける辛味が、ともするとしつこくなる脂っぽさを昇華させてくれる。何というか、様式美。付け合わせには意味があるんだなぁ。
ご飯がすすむのと、ビールに合うのとは必ずしもイコールではないけど、私のなかではともに褒め言葉、それも最上級。うまく配分してご飯を完食。
ミルフィーユかつは思った以上に傑作だナ。こんど、さぼてんで持ち帰りを買って、自宅ビールのアテにしよう。
食後は少しぬるくなったコーヒーに、砂糖をたっぷり入れて、ゴクリ。苦味と酸味、甘みが渾然となって、豚の余韻を名残惜しくも拭い去る。
さらば愛しきミルフィーユよ。
ごちそうさまでした。