しこたま飲んだ次の日は、汁物が恋しくなる。四十代も後半に入ると、もはや〆ラーメンが入るような胃袋の頑健さはない。
アルコール分解で使われた血糖の補給は翌朝。家を出る前は、まだそのときではない。まだまだ胃がムカムカしてるからネ。
そして、通勤途中、生汗が出終わった頃に、食欲が戻る。そう、このタイミングで立ち食いそばへ向かう。
あったかいそば、もっといえばステキなダシで胃を満たしたい。
かき揚げに玉子がのる「天たまそば」がウリの店だけど、天ぷらを咀嚼する気力もなく、たぬきそばに生卵を単品で追加。なぜだか油っ気をかきこみたいという欲はあるんだよナ。
食券を提出すれば、厨房からは「今から茹でますんで〜少々お時間いただきます」とのお返事。
朝時間帯は茹で置きしないんだよね。高まる期待とともに待つ。AM ラジオが砂時計がわりだ。
3分ほどでやってきました、たぬ玉そば。かなり熱めのダシに泳ぐ生卵は、今にも凝固を始めんばかりです。ダシをシュルシュル味見。しみるなー、五臓六腑。
まずは少し温まった白身をつるり。溶け出しちゃうと、ダシが濁るからね。いや、濁ったダシも好きだけど、飲み干せないじゃない、全部は。
そして、半熟になった黄身を箸で切り、そばに絡めて食べる。純白の更科がみるみる黄に染まるのは、ちょっとした背徳感だネ。
黄身をあらかた食べ終えたところで、七味をぱらり、揚げ玉の時間です。そばとともにかきこむと、唇がテラテラして保湿によさそう。
揚げ玉はしっとり系でダシをよく吸う。おっ、かき揚げのカケラだ、なんかラッキー。しらす干しに入ってるミニタコみたいなもんだね。
じわーっと汗をかきつつ、ひたすら麺、麺、麺。
そばをすすると、勝手についてくる揚げ玉たち。健気だけど、集めきれない奴らは堪忍な。
ツユで満たされた胃は、きっと昨晩の酷使を許してくれたことでしょう。グラスの水で汗をひかせて、器を下げて店を出る。立ち食いそばの様式美。
ごちそうさまでした。