今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 67)うな重(蒲焼、白焼)

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先日、いいうなぎを食べてしまった。


口が贅沢になったらどうしよう、なんて思いながら、ついつい食べてしまった。


いいオトナだからそんなにオドオドすることもないんだけど、お祝いごとでもないのに、豪勢なものを食べるということに、良心の呵責を覚える。


小心者なんだろうか。あたしンちのお母さんなんて、10 円高い味噌すら買うのをためらっていた。


生活レベルはいちど上げると、自分の意思では下げられないなんて言葉に怯えたりした。


… あれから数週間。


「主人を呼べい!」な〜んて、食にこだわりが生まれるでなく、特に変わらず立ち食いそばやラーメンをおいしくいただけている。


当たり前だけど、いちどくらいの贅沢では、人間変わらないものらしく、ホッとする。


安心したところで、土用丑の日らしく、うなぎ実食の感想なぞ。


「〜〜を食べたことがないなんて、人生半分損してる」なんて言説には同意しかねます。人生の半分を占める何かは人それぞれ。


でも、美味しんぼで山岡さんが言ってた気がする「かわいそうに、本物の〜〜を食べたことがないんだな」はわかる気がする。


前者は好みの問題だけど、後者は質的な問題なんだよね、きっと。


さて、前口上が大変長くなりましたが、うなぎ。


絶滅が危惧されているといううなぎ。


そもそも丑の日は平賀源内が〜なんて話は Wiki にお任せするとして、ググったら近隣にあったというだけで選んだこちらのお店。


幸いにひと組待ちで入れたので、メニューを眺めれば、なるほど、街のうなぎ屋さんの相場。すき家松屋のうなぎとは一線を画す価格帯。


素材、技術、雰囲気を買うと思えば高くはない、だろうな。逡巡したすえ、一番高い蒲焼きと白焼きの合い盛りを選択。


高ければ高い壁のほうが登ったとき気持ちいいもんな、とはミスチルの歌詞だっけか。この場合は、清水の舞台から飛び降りるという表現のほうがふさわしいかな。


ともあれ、ひたすら待つこと数十分、当たり前だけど本格派のうなぎ屋さんだから、注文を受けてから裂くから時間がかかるのだ。


時間のかかるのは百も承知、ジャズの流れる落ち着いた店内で、時を待つ。


程よく空腹感が増したころに、やってきましたマイうな重


食べかたの説明に耳を傾けると、白焼きは、塩やワサビといった薬味で。蒲焼きはそのままで。最後に茶碗によそってダシをかけてお茶漬けでどうぞ〜なるほど、名古屋名物ひつまぶしにも似た、三段活用ですな。


まずは白焼き。香ばしく焼き上げられた白焼きは、タレがないだけに、うなぎの脂の旨味がよくわかる、トコトンわかる。


これに、塩パラリ、山椒の実パラリ、ワサビちょっぴりのせたりすると、まあご飯がすすむこと、すすむこと。ビールなぞ頼んだらお腹の余裕がなくなるところだった。


途中、肝吸いをゴクリ。淡麗なダシに、プリプリの肝が合う。


さて、後半戦の蒲焼きへと。タレのぶんしっとりしているけど、タレの旨味が間違いない。あれでしょ、秘伝のヤツ。


年甲斐もなくモリモリ猛烈に食べるも、だんだんお腹いっぱいになってくる。


しかし、今日は延長戦がある。


茶碗にご飯と鰻をよそい、青ネギを載せ、アラレとノリをかける。これをオカズに、ご飯が食べられそうなビジュアル。


さらにダシをたっぷりと回しかけて、お茶漬けを実食。タレ、うなぎの脂がとけ込んでいる溶け出してるダシのおいしいこと!  


語彙の貧困さがもどかしいほどの旨み。そして、アラレの香ばしいこと!なんだこりゃ、永谷園もビックリだな。


ふだん食事にうっとりすることってないけど、まったくもって白旗、無条件降伏のおいしさ。また、頑張って稼いで、5年後くらいに食べに来よう。


せっかくのうなぎ、満喫、満喫。これまた、腹持ちがよく、夕方になってもお腹いっぱいだったのがすごいね、うなぎ。


たいへん、ごちそうになりました。