街並みは移ろいゆくものですが、見知った店が閉店していると縄張りを失ったような、そんな錯覚に陥る。チェーン店とはいえ諸行無常だな。
そんな貸店舗の貼り紙を尻目に、老舗の独立系立ち食いそば店に向かう。何というか、地に足がついていて、当たり前に風景に溶け込んでます。
さて、こちらは天ぷらがおいしい。朝は揚げたてでもあるし、いつも頼んでしまうけど、ここはあえて初心に戻ってたぬきそばを食べてみよう。
揚げ玉といえど、朝イチのフレッシュさは格別。ひと口目はカールのようにサクサクだけど、すぐにツユを吸い込んで、ふわっふわにふくらむ。
丁寧に刻まれたネギ、チョコンとのるワカメも様式美。主張しすぎない淡麗なダシに、ゆらゆらと泳ぐそば。揺らぎなく続く店には裏づけがある。
途中で七味をふりかけ、一心不乱にそばをすする。いつものように玉子を入れたら、いつ破ろうかなんて邪念が芽生えていたことだろう。
ふと我にかえれば、ツユにはたぬきのモロモロが三つ四つ、二つ三つとて浮かぶ。ありがとう、おいしかったよ、と箸で集めてツユごと飲み込む。
基本のキに立ち返るような一杯。なんか、人生にも通ずるな〜。うれしく元気をつけたところで、今日も頑張っていきまっしょい。
ごちそうさまでした。