再開発を待つ路地裏にたたずむ立ち食いそば。ずっと気になっていたけど、なんとなくタイミングが合わず、どことなく敷居が高かかった。
あるとき図書館でその店を紹介した本をみつけ、常連との結びつきの話を知る。一見さんには厳しいかな〜。でも京都の料亭じゃあるまいしな〜。
周辺のビルの取り壊しも始まったところで腹をくくる。旅の恥はかき捨てというし、そもそも一見さんなんていちいち気にしていないでしょう。
さて、初めての立ち食い店はたぬきそばに限る。個性が出るところだし、大成功もないけど、何より外れることもまずない。それがたぬきそば。
たぬきそばを注文し、先払いかもしれないので貼り紙で値段を確認、財布から小銭を取り出す。この小心さはきっと戦場なら役に立つだろうな。
お兄さんがそばを小袋から取り出し、手早く茹であげ丼ぶりに盛る。すると横にいたおかみさん風がワカメ、ネギ、たぬきを盛りつけツユを注ぐ。
当たり前のように繰り返されてきたであろう淡々とした所作、無駄のない丁寧な動きに見惚れる。仮に再開発されても移転して頑張ってほしいナ。
さて、肝心のそば。ツユはアチアチ、醤油がきいたタイプで実に好み。揚げ玉はサクサクの食感が楽しいうちにたくさん食べておこう。ズルズル。
壁のテレビが点いているのだけど、店の隅では常連風の女性がおかみさんとずっと話しこんでいて、聴く気はないけど聴こえてしまう。
やれ1日の食費がいくらで、アイツは好き勝手やってて、金がなくなるとタカリにくる。空いたカレーの器越しに、そんな話をずうっとしている。
なるほど、事前情報どおり、常連に愛されてるんだな。味はもちろん、おかみさんの人がらも店のウリだな。などとワカメを食べながら思う。
あっという間にそばを食べ終え、残る揚げ玉をかき集めるようにすすり込む。好みのツユなので、いつもより余計に飲んじゃうねぇ。
心配していたお支払いは食後。ごちそうさまとスツールから立ち上がり、カウンターに小銭を供える。また折をみて食べに来ようかな。
ごちそうさまでした。