自分を変える。なんて大それた話ではなく、いつもの店で、いつもと違うそばを頼む。浮気心なのかなぁ。まあ、気まぐれにすぎないけどサ。
たぬきか春菊天が普段の選択肢だけど、ブログをみても、実感としてもあまりに頻繁に食しており、ひょっとして惰性ではないかと自分を疑う。
知らぬ間に築いてた自分らしさの檻のなかでもがく、と歌ったのはミスチルだけどまさにそんな心境。死んでるみたいに生きてはならぬ、のだ。
仰々しく御託を並べましたが、ようは食べ飽きただけかもしれません。で、いか天をチョイス。サクサクした歯ざわりが早くも思い出されます。
せっかくなので、財布にたまった小銭も一掃しようと玉子をトッピング。しめて 490 円、思惑通りに、心も、財布も、軽くなりましたヨ。
朝早いからか、天ぷらのラインナップはまだ揃っていないようす。天ぷらパットには、かき揚げ、エビ、竹輪などの一軍が並ぶのみである。
「いか、少々お待ちください」。店側もまさかこの時間帯にいか天とは奇襲だったのだろう。すなわち揚げたてがいただけるニンマリの待ち時間。
揚げたてのいか天、衣に染み入るツユ、白く煮えていく玉子。様式美のような丼ぶりの小宇宙にしばし見惚れたのち、まずはいか天をガブリ。
アッツイ。揚げたてなのでツユより熱い。普段は揚げおきの天ぷらをツユで温めて食べているわけだから、不意打ちの愉快ツーカイな熱さですね。
予想通りの淡麗ないか天を楽しむうちに、剥がれゆく衣もまたいとをかし。白身でツユが濁る前にチュルリと飲み込み、黄身は温めておく。
そば & ツユの安定感は長年連れそった夫婦のような、小津映画のワンシーンのような、絵もいわれぬおいしさです。さすがは老舗立ち食い店。
いか天の跡にはドロドロの衣が浮かぶ。たぬきそばの揚げ玉とは異なるゆるやかな食感が楽しい。半熟の黄身を破いてそばボナーラも嬉しい。
たまには、良いね、いか玉そば。下げ膳するときにチラリとパットを覗けば、春菊天、はぜ天が加わっているが、いか天はまだ準備中のようす。
いか天、お前、何番手なんだよ? 応援したいけど、本妻のたぬきがいるから、またそのうちな。などと勝手なことを思いつつ店を後にする。
ごちそうさまでした。