「たぬき」には2種類ある。天ぷらを揚げたときにオマケでできる天かす、天ぷら粉を単独で揚げてつくる揚げ玉。ま、どちらも風情があるよね。
たぬきそばを注文してどちらが出てくるかは時の運、というより店の方針。今日は天かす、明日は揚げ玉なんて店はなく、そこは一貫している。
さて、こちらの老舗はどっちだろう。食券を出すや否や、素早く温め直されるそば。そして奥で盛りつけが始まる。ドキドキ、ワクワク。
おっ、こちらは揚げ玉ですねえ。大小いろんなまん丸が浮いております。まずは七味をパラリとかけて、そばをズルズル、細麺がツユに合います。
しかし、揚げ玉はフワフワと海月の如く浮かび、一向にそばに絡まない。一網打尽にしてやるとばかりに、丼ぶりを持ち上げ、サラサラ流し込む。
ダシのきいた甘めのツユを吸った揚げ玉は、ひと粒ひと粒宝石のようにおいしい。揚げ油に溶け込んだ他の天ぷらの旨味を吸い込んでいるのかも。
ネギがつながっているのはご愛嬌。急がなくともいいのに、つい早食いになるそばの魔力。額に汗をかき始めた頃、そばは完食と相成りました。
食べ終えた後、オホーツク海を埋め尽くす流氷の如く、所狭しとツユに浮かぶ揚げ玉たち。かき集めてサラサラするも、さすがに食べきれない。
水をゴクリと飲んでカラダの熱気を冷まし、無念さと満腹感を秘めて、返却口へと丼ぶりを運ぶ。夏場に冷やしたぬきで完食リベンジしようっと。
ごちそうさまでした。