幼いころ、身欠きにしんのことを、磨きにしんだと思っていた。少しテカッているし、なんらかの手段で磨き上げられたんだろうな、という誤解。
そう、駐車場は謎の月極(げっきょく)コンツェルンが仕切っていたし、ハロー警報、台風一家、透明高速など、数多き若さゆえの過ちの1つ。
さて、にしんそばはもともと京都の名物。江戸時代、長期保存すべく干物とされたにしんが、北前船ではるか蝦夷地から運ばれてきたのが始まり。
丼ぶりで威容を放つにしん。まるで、吾妻男に心を許さない京女のような、凛とした姿どすえ。まずは端を少しもいで口に運ぶ。キュムキュム。
身欠きにしん独特の食感。甘辛く炊いてあり、滋味あふれます。さば街道しかり、盆地で海の幸が食べられるのは、さすが千年の都・京都ですね。
昔は、貴重な蛋白源だっただろうし、いかに保存して、どうおいしく食べるかの積み重ねが窺えます。令和の世にあっても、おいしさは不変。
ズルズル、キュムキュム。昼下がりの街そば屋さんは静かな時間が流れます。油っこくなくて、滋養にあふれるにしんそば、また食べに来よう。
ごちそうさまでした。