今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 498)月見きしめん in 富士そば

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食べ物に関する刷り込み効果は、およそ実家の食事に依る。コロッケは俵形とか、何にでも醤油をかけるとか。わが家のルールが暗黙の掟でした。


外食をする年頃になると、同調圧力というか、食の世間水準を少しずつ学ぶ。それに並行して、家庭料理にはない、初めての食体験を積んでゆく。


立ち食いそば好きの私ですが、初めての立ち食い体験ははっきり覚えています。高校の模試帰りに中央線のホームで食べた、素きしめんでした。


立って食事するというインパクトもさることながら、初めてのきしめんも印象深い食べ物でした。ヒラヒラの麺、花がつお、ダシのきいたツユ。


そんな原体験のせいか、たまに無性にきしめんが食べたくなる。東京で出す店は少ないけど、店舗限定ながら取り扱いのある富士そばへ向かう。


各種うどんそばに+30円できしめん変更が可能。ここはシンプルに、初心に帰る意味でも月見にしておこう。ほどなく呼び出しがかかり、ご対面。


きしめんは縦横のないうどんと違い、唇を通るとき横になる。そう、喉越しよりも、唇を通るときのピラピラを堪能するのが、きしめんの醍醐味。


それにしてもツユが熱い、やたら熱い。あっという間に固まる白身を先にツルリ飲み込み、残された黄身をジンライムのようなお月さまと仰ぐ。


うどんでいいじゃん、という向きもあろうけど、両者は、+ドライバーとドライバーくらい違うよね。丁寧に1本、いや1枚ずつ食べてゆく。


残りわずかで秘蔵っ子の黄身を割り、フェットチーネさながらに楽しむ。おいしいな、きしめん。やっぱり刷り込みには抗えない、と改めて思う。


ごちそうさまでした。