ふと、きつねうどんが食べたくなる。香り高いダシ、喉越しのよいうどん、ダシを存分に吸ってなお甘い油揚げ。こうなると矢も盾もたまらない。
立ち食いそばでうどんも出しますという店は、いわゆる関東風のツユだから頭書の目的は達せられない。電車に揺られつつ脳内地図を検索する。
新宿のアソコは開店前、最寄りのアソコはきつねがない…難渋するかと思いきや、結論は意外と早く導かれる。そう、なか卯があるじゃないか。
丼ぶりと京風うどんの店を名乗るだけあり、きつねうどんの取り扱いもバッチリ。いわゆる「けつね」が食べられそうです。めでたしめでたし。
しかし、食事はこれからが本番。なか卯の券売機は押す回数が多くて、適度に焦らされます。食券を提出し、冷たい緑茶を飲みつつ、しばし待つ。
1分もせずやってくる待望のきつねうどん。ツルツル、もちもちのうどんをすすり、申し訳程度に噛んで、ツルリと喉越しよく飲み込んでしまう。
お待ちかねのダシをゴクリ、鼻に抜ける昆布とかつおの香りがたまりません。油揚げは甘く、カリオストロの城のルパンのようにハフハフ食べる。
まるで答え合わせのような予定調和のおいしさ。チェーン店ばかりでは街の風景が寂しいけど、この安定感はやはりありがたい。現金なもんです。
勢い余ってあっという間に完食。食べたいと思っている時間のほうが、食べている時間よりはるかに長い。若き日のデートのような邂逅でした。
ごちそうさまでした。