天ぷら。寿司やそばと並ぶ和食ですが、専門店にはあまり行かない。普段はそば屋の天ぷらで満足しているし、贅沢したとて、天やに行くくらい。
いい歳してなんですが、敷居が高いのですよ。職人さんが、絶妙な火加減の天ぷらを和紙に乗せて「塩でどうぞ」なんて言われて。あぁ緊張する。
オジサンだから、変な自意識をもたず、食べたいもの食べればいいんだけどね。で、今日に限って天ぷら屋さんの前で、揚げ油の香りに誘われる。
店前で値札をみても、ランチタイムなのに最低四桁。店内は窺い知れないけど、小さな勇気を出して暖簾をくぐり、カウンターの端の席に座る。
軽やかな香ばしさが店の中を満たしており、しあわせな気持ちで、一番安い天丼を注文。キス、2本つまみえび、えびかき揚げ。期待が高まる。
表面が毛羽立つ新茶を飲みつつ到着を待つ。チリチリとした音がすでに食事のプレリュード。後客の常連風が「いつもの」と言うのが印象的です。
さて、やってきた「はじめての」天丼。蓋を開ければ、ぷぅんといい香りが鼻腔をくすぐる。蓋には蒸らし効果もあるらしく、天ぷらがむっちり。
見た目はひたすら茶色い。だがそれがいい。まずは2本がまとまったえび天をガブリ。サクプリ、サクプリ。たまらず、ご飯をかき込みます。
甘さ控えめのタレがなお食欲をそそり、一気にえび天を食べ尽くす。香の物で、落ち着きを取り戻したら、今度はかき揚げを箸で割って、パクリ。
衣はむっちりした食感で、噛むたびに小ぶりなむきえびが弾けます。きす天はそばも似合うけど、さすが江戸前の天ぷら、丼ぶりでも実力発揮。
ここでふと、天丼に椀ものがつかないことに気づく。松屋に慣れたせいか、丼ものには味噌汁がついてくるという錯覚に陥っていました、反省。
しっかり咀嚼して、江戸前の技術を堪能。小さな勇気ぶんは回収できました。常連は三千円近い定食! そのうち蛮勇を奮って食べよう!…かな。
ごちそうさまでした。
★しばらくは孤食のグルメ&お蔵出しです。