今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 358)新サンマの塩焼き定食

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さんま、さんま

さんま苦いか塩つぱいか


とは佐藤春夫の詩の一節。別に文学青年だったわけではなく、美味しんぼでの引用で知った、いわば孫引きの知識。実は不倫を描いたものだとか。


背景はともあれ「さんま、さんま そが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせて」なんて言われたら、ゴクリと喉が鳴り、グルルと腹も唸ります。


黒板の新サンマの文字に一も二もなく注文。若い頃はあまり興味がなかったけど、アラフィフともなると、秋のマイ風物詩として欠かせません。


注文から待つこと10分以上。炭火焼ではなくグリルだろうけど、待ち時間も食事のうち、思い過ごしも恋のうち。待望のサンマのお目見えです。


はやる気持ちを味噌汁で落ち着かせて、秋刀魚の名にふさわしい光る魚体を見つめる。近年不漁、不漁と叫ばれますが、今年も無事に会えました。


まずは上半分から攻めよう。サクリとした感覚が箸に伝わり、身をほぐしとって口に運べば、鼻腔に秋の風が抜けてゆく。急いでご飯をかき込む。


適度に塩がふられており、サンマの旨みとご飯の甘みでずっと噛んでいられる。骨の裏手の身を剥ぎ取りつつ、じっくり、じっくり食べ進める。


念願の苦〜いハラワタ、ビールが恋しいネ。小骨をもろともせず噛み砕いてしまう。ここで大根おろしに醤油をタラリ、口の脂をサッパリさせる。


いつのまにか苦い=うまいになった。さんまに限らず、ビール、春菊なども大好物。加齢によって苦み走ったいい男に近づいたのかもしれないな。


ともあれ、1年間そこそこ健康でいたからこそ、今年もこの味に出会えるわけで、それだけでありがたい。スダチはなくとも、大満足でした。


ごちそうさまでした。


しばらくは孤食のグルメ&お蔵出しです。