今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 641)つけ麺

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「十分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない」とは SF 作家アーサー・C・クラークの言葉ですが、なるほど言い得て妙です。


「十分に発達したつけ麺は、もりそばと区別がつかない」とは牽強付会ですが、そば湯=スープ割りをいただくお作法も共通します。


つけ麺を出す店は多いけれど、すべての店が「スープ割り」を明示していない。暗黙の了解か、取り扱わないのか、疑心暗鬼となる。


煮干しラーメンで名高いこちらは、醤油、塩のほか「つけ麺」もある。200 g なら小腹におさまりそうなので、試してみよう。


店内を満たす煮干しの香ばしさ。煮干しというと、幼いころダシ用に頭とワタをとる手伝いをした思い出が。昭和の子ならではです。


あたしンち」で、ダシをとった煮干しを食べてるの?と友だちに言われて、慌ててカルシウム補給にね(汗)なんて話もあったな。


まあ、栄養的には食べてもいいけど、食感はよくないかな。山岡士郎なら「味噌汁の具はひとつにしないと味が濁る」とか言うしな。


閑話休題、つけ麺の到着。店員さんが「スープ割り、お申し付けください」と言い残したので、食後の疑心暗鬼がなくなりました。


安堵してマスクを外せば、つけ汁の香りにメロメロ。レンゲで舐めるように味見すれば、ほんのりフルーティでハートを盗まれる。


やおら太麺を持ち上げて、つけ汁をほんの少しつけ、一気呵成にすすりこめば、旨みの風が鼻を通り抜けて、わかりやすくおいしい。


冷たくしまった太麺はゆるゆるとウェーブをえがき、計算されたようにつけ汁をまとう。この味に気圧されぬよう、ズルズルすする。


クキクキしたメンマは、歯ごたえのアクセント。ホロホロのチャーシューはつけ汁に漬け込んでから食べると、脂のなんと甘いこと!


途中で柚子コショウを溶けば、つけ汁がさらに進化。ピカチュウライチュウになるくらい別ものです。ダーウィンもびっくりです。


で、キレイに完食したのち、お楽しみのスープ割り。水炊きのごとく白濁したスープは、煮干しが本懐を遂げたかのような旨みです。


コクコクと飲み進めるも、やめどきが見当たらない。全部飲むのは塩分が気になるけど、煮干しの誠意に応えねばという妙な責任感。


逡巡したすえ、水深5ミリ程度を底に残す。「おいしかったです」と「健康に気遣ってます」のせめぎ合いの結果が、5ミリでした。


ごちそうさまでした。