街並みに溶け込むというか、街が後でついてきたような、年季の入ったそば屋さん。敷居が高い老舗然としておらず、気軽に入れます。
定番メニューや丼ぶりものなど悩ましいけど、季節メニューの牡蠣そばに目を奪われる。旬ならではの誘いには抗わず、すんなり注文する。
すぐに、先付けとしてお新香、冷奴、茄子の煮物が出てくる。どれも滋味深く、ありがたくいただく。中でもピリ辛の茄子が白眉です。
壁をみれば、雑誌の取材だろうか、大将のインタビュー記事が飾られている。街と一緒に時間を過ごして、今や傘寿を迎えんとするとか。
なるほど。自分がその歳になってキビキビ働ける気はしないけど、元気のお裾分けをもらおうかな。やってきた牡蠣そばをしげしげ見つめる。
牡蠣は茶色くツユに擬態しており、小松菜の緑が映えます。牡蠣をひと粒食べれば、甘辛く煮てあるけど、縮むことなく、ふわふわ。
これはおいしい。ツユが濃いめで、冷酒が似合いそう。そばは細く儚く、やさしい味わいで、七味をふれば、体がジワリ温まってきます。
いつものように店員さんが各テーブルに、大阪のおばちゃんばりに飴をすすめてくれる。先客が断った反動か、私は4つも貰えました。
そばを食べ終え、お茶を飲み干し、ひと息つく。飴ちゃんはどれものど飴のようで、自分では買わないだろう黒糖飴を舐めつつ帰ろう。
ごちそうさまでした。