名物にうまいものなし、といわれる。地元の特産物をきらびやかにあつらえた最近の名物と違い、土地の歴史を背負った名物はクセが強い。
長野の昆虫食、滋賀の鮒寿司などの珍味はもちろん、アンモニア臭がきつかったかつての藁納豆なども、人を選ぶ味わいといえようか。
さて、こちらの蕎麦店。メニューをみれば自ら名物を名乗る夜鳴きそばをみつける。ほう、みせてもらおうか、夜鳴き蕎麦とやらの実力を。
そもそも夜鳴きってなんだろう、夜泣きなら赤ちゃんだけど。夜鳴きは江戸時代の蕎麦屋台の深夜営業に由来するらしく、今ならラーメンの印象です。
ともあれ、実体がわからない。こちらはラーメンも出すので、そちらの可能性も捨てきれない。どんなのがくるものか、あえて調べず楽しみに待つ。
やってきたのは、一見すると肉南蛮。どうやらトロミつきのようで、湯気があまり出ていない。ズルリとそばを手繰ると、濃いめのツユがしみる。
ネギはとろとろに煮え、肉は歯ごたえよくンマーイに尽きる。季節的に新そばだろうけど、繊細な風味はわからない。でも、温まるのが嬉しい。
こちらの夜営業は蕎麦居酒屋だから、〆に人気なのかな、夜鳴き蕎麦。ハフハフ食べれば、ドッと汗をかくので、きっとアルコールも飛ぶだろう。
名物にうまいものなし、とは昔の話で、物産展やお取り寄せなど、各地の名物はご馳走の認識ですね。こちらはローカルな名物ですが、楽しめました。
ごちそうさまでした。