今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 785)伊勢うどん卵のせ

 

伊勢うどんを知っていますか。ふわっふわのうどんに、ダシとたまり醤油を混ぜ合わせていただく、長旅をしてきた伊勢参りの参拝客の胃にやさしいうどん。

 

私は紀伊半島を訪れたとき、伊勢うどんの存在を知らなかった。たまたま鳥羽水族館でアシカショーまでの時間潰しに食べたのが、伊勢うどんだったのだ。

 

コシだの、ツユだの関係ない。伊勢うどんという1つのジャンル。400 年以上続く歴史と伝統の味を、都内で食べられる店は少ない(成城石井で買えますが)。

 

はじめて食べたのが水族館の売店だったので、卵がのっただけのシンプルな一杯でした。この店には肉のせもあるけど、原体験を大切にして、卵のせにしよう。

 

一見すると釜玉うどんのような、真っ白なうどん、黄色い卵、緑のネギの映える彩り。しかし、丼ぶりの底には、漆黒のたまり醤油が潜んでいるのです。

 

 

サービスの揚げ玉をのせて、右からえぐりこむように混ぜ込む。paint it black ならストーンズだけど、まさにそんな感じで、すべてが茶色に染められる。

 

箸で持ち上げて、スルスルとすすると、ほのかに甘く、たまり醤油の旨みが唇にも伝わる。うどんはふわふわというか、クタクタで、確かに胃にはやさしい。

 

しみじみおいしい。コシの讃岐うどん、ダシの大阪うどん、カッチカチの味噌煮込みうどんなど、うどんも好みがあるけど、論争がバカらしくなるやさしさ。

 

噛むのはわずか、舌と上あごで押し潰すようにして食べられる。見た目消失していた揚げ玉が、たまにサクサクするくらいで、ひたすらに心穏やかな食事です。

 

途中で七味をふれば、適度な刺激は嬉しいかぎり。漆黒のたまり醤油は、ひと瓶家に欲しいくらいですね。このやさしさに包まれに、また、こよう。

 

ごちそうさまでした。