冷やしそばを食べ始めるタイミングは難しい。ファッションの基本は季節を先取りというけど、立ち食い業界もそうなのだろうか。少し悩ましい。
冷やし中華ならば「はじめました」のポスターが季節の呼び水ですが、立ち食いそばでは年がら年中取り扱っている店舗も多い。実に悩ましい。
まあ、思い立ったが吉日かな。箱根そばの券売機で冷ボタンをポチリ。本番前にカラダが冷えないように水をチビチビ飲みつつ、呼び出しを待つ。
今年の初もの、恭しくいただこう。器を少し傾けてツユにワサビを溶く。少しずつ濁るツユで、季節の変わり目を感じるね。まずはツユを味見。
ツユは当然ながら冷たく、濃いめ。ダシのやさしさをとりこむ温そばと異なり、ツユの粋を味わうといった異なる趣きです。だがそれがいい。
たぬき、きつね。ワカメ。さんま、たけし、タモリの如き、朝そばの豪華な顔合わせ。たぬきはモロモロ、きつねは甘く、ワカメは歯ごたえ十分。
冷たいと味がよくわかりますね。もりそばに直接七味をかける池波正太郎先生に倣い、途中で七味を振りかけて味変を楽しむ。楽しみすぎだな。
すっかり平らげてもあえてそば湯はいただかず。冷えたカラダはそのまま、新しい半袖シャツをおろしたような感覚。冷やしそば、はじめました。
ごちそうさまでした。
★しばらくは、お蔵出しです。