生活圏に立ち食いそば店があると、生活が潤う。正確にいえば、散歩が充実する。ラーメンほど重くなく、朝早くから開いているのは重宝する。
さて、箱根そばの朝そば。久しぶりだから、どんなのだったか覚えていない。店内をみても季節商品のポスターばかりで、朝そばのヒントはなし。
「おそばで」と食券を出し、水を汲んでカウンターの端を陣取る。程なく呼び出しがかかり、いかにも手慣れた体で受け取れば、ムジナでした。
なるほど忙しい朝にそば種で悩むことがないメニューですね。たぬき、きつね、わかめ。三種の神器に彩られたひと品は胃にもお財布にも優しい。
いつもながらのやさしいツユが、五臓六腑にしみる。お揚げはどこまでも甘く、モロモロ系の揚げ玉は背脂のようにツユに油っけをもたらす。
そばをズルズルたぐり、揚げ玉を絡めとっては食べていく。ワカメ、ネギも丹念につつけばじきに完食。周りをみれば、箱そば愛好家が次々来店。
そう、通勤路と重なるけれど、生活圏に立ち食いそばがあるのは都会住まいの特権なのです。おデコの汗をぬぐい、水を飲み干して、席を立つ。
ごちそうさまでした。