今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 796)春菊天そば

 

苦味がいつからおいしくなったのか。不思議なもので、明確な分岐点は覚えていない。いつからか、ビールの苦味こそ明日への活力と感じるようになった。

 

そもそも、苦いものには毒が多い。子どもが苦いものを食べられないのは、経験からでは毒の有無がわからないから、そのぶん舌が鋭敏なのだとか。

 

で、年をとるうちに、苦味が危険とは限らないことを学習し、やがて「おいしいかもしれない」となり、ビール、コーヒーなどの嗜好品を好むようになる。

 

さて、前置きはさておき、寒くなると春菊がおいしい。おひたしや炒め物などでもおいしいけど、すき焼きやそばなどの熱いツユとの相性が抜群だと思う。

 

ビタミンなどの栄養も嬉しいけど、やはり春菊の本質は苦味です。今朝は旬の春菊天をいただこうと朝起きてすぐに決めたので、ためらうことなく食券を購入。

 

こちらは立ち食いだけど、朝早いと都度茹でしてくれます。待っている間に券売機をしげしげと眺めれば、新作の冷たい山形の肉そばを発見、こんど食べよう。

 

やってきた丼ぶりでは薄手の衣をまとい凛と背筋が伸びた春菊が横たわります。茎を箸で挟んで持ち上げ、葉っぱのほうにかじりつくと、ツユが熱いのなんの。

 

ダシもカエシも濃いめのツユが、春菊の苦味を受け止め、舌の上で格闘しています。相手の技を受け止め、そのうえで自らを鼓舞する、プロレスの美学ですな。

 

七味をパッとふりかけ、そばをすする。野趣あふれる挽きぐるみの田舎そばは、これまた濃ゆいツユに負けていません。ざらざらした舌触りも、風味のうち。

 

ここで春菊の茎部分にかじりつくも、歯が繊維を上滑りして、噛みきれません。ならばと口に押し込み、ようく咀嚼する。草を喰んでいると、ヤギ気分です。

 

ウメェ〜ウメェ〜と食べ進め、そばをすすり終える。寒い季節だけど、そばの熱気で胃から温まり、すこし汗をかく。一日頑張れそうな、苦い栄養補給でした。

 

ごちそうさまでした。