今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 845)春菊天そば

 

 

タクシー運転手が通う店は間違いなくおいしいという。味はもちろん、お値打ち感や利便性などが口コミで伝わるのだから、そうなのだろう。街道沿いの店が該当する。

 

その類いで、工事現場のひとに人気の店はコスパに優れていると思う。色々な現場を渡り歩く彼らの食への嗅覚は鋭く、口コミも相まって、社食のごとく人集りになる。

 

で、立ち食いそば店。朝から挨拶を交わしつつ、次から次へと客が押し寄せている。これから体を使う彼らは、揚げ物やご飯セットを注文しており、何やら頼もしい。

 

速達性、カロリー、塩分、満腹度、何よりおいしく、暖気までとれる。人気の理由は考えるまでもないな。さて、肩身狭くカウンターで待ち、春菊天そばを受け取る。

 

凛と筋の通った立派な姿揚げは、スネオヘアーのごとく。先っぽの葉の部分をツユに浸してガブリといく。サクサクなのは刹那で、かじるごとにほろ苦さが口に広がる。

 

安定の濃いめのツユは天つゆよりもインパクトが強く、勢いに任せて1枚食べてしまう。茎の部分が筋っぽく、そばのようにすすってしまう。アツアツ、もぐもぐ。

 

残る1枚にツユを吸わせている間、そばをスルスルたぐる。蕎麦殻の風味が感じられる田舎そばは、お腹から体を温めてくれますね。丼ぶりを持ち上げ、ツユをゴクリ。

 

最後に残るは、ややくったりした春菊天。持ち上げるとゆるやかにたわんで、どこから食べたものか逡巡する。茎方面から口に運び、ズズっと半分ほど食べて噛み切る。

 

春菊や明日葉など苦味のある和製香草は、おひたしもいいけど、やっぱり軽やかに揚げるのが一番おいしいですね。残る葉っぱ方面をモムモムと味わって箸を置く。

 

自分の世界に入り込んでいる間も客がどんどん入れ替わり、朝イチなのにランチタイムのような賑わいです。水を飲み干し、人波をかき分けて下膳する。おいしかった。

 

ごちそうさまでした。