今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 39)なか卯の二八そば

f:id:socius_lover:20190318073940j:plain


そばを打ったことはありますか。

私はいちおう、あります。


若い頃、なぜだか新そばを打って、取引先に振る舞う接待が幾度かありました。今思えば、なんだったんだ、あのイベント。


もちろん、職人さんの指導のもと執り行うのですが、そば打ちは難しい。定年後にそば店を開くなんて大それたことは、少なくとも私には無理だと実感しました。そもそも客商売向きでもない。


ともあれ、大きなこね鉢に入れられたそば粉は、信じられないくらいボソボソで、はたしてまとまるのか信じられません。

でも幾度も押し込んでいくと、やがてそれはひと塊りとなっていきます。重労働ですが、ここの水加減が職人さんの腕の見せどころ。


よく、職人はその日の天気で加減を変えるなんて言いますが、それを目の当たりにすると感心することしきり。


ヒマそうにしている若手社員を動員して打たれたそばをビニール袋で寝かせて、あとは職人さんが麺棒でのばしてはそば切りにしてくれます。この工程はシロウトには無理でしょう。惚れ惚れとする手さばきはまさしくプロのそれ。


その後、接待中のバックヤードで、茹であげては水でしめて食べるそばは、長野の地酒・真澄との相性もよく、労働の対価として上等でした。


で、小麦粉2割、そば粉8割の二八そばは、十割に比べてまとまりやすいらしいんですよ。食感もツルツルするとかで、あとは好みの問題。


みんな違ってみんないい、そんな違い。


前口上が長くなりましたが、なか卯の二八そば。工場でつくられたものだろうけど、おそらく絶妙な水加減がなされたであろう二八そば。


まずはさじですくってつゆをひと口。なか卯は京風うどんが看板ですが、これはそばに寄せた絶妙なつゆ加減でおいしい。


いや何食べてもおいしいと言っているので説得力はないですが、少なくとも自分周りの家庭料理では出てこない範疇の味つけです。


関東風のドス黒いつゆとは違う、透明なダシのきいた感じ。でも甘さも際立つ。さすがに揚げ玉は申し訳程度だけど、ネギは京風らしい青ネギ。


ツルツルといただくと、そばの香りはもちろんのこと、つゆとあいまってちょうどいい加減になってます。

シンプルな一品なので、具をいつ食べるかという悩みもなく、無心に食べ進めれば、あっという間に完食。実にいい朝ごはんでした。


唯一読み違えたのが自分の腹具合。玉子、ごはん付きのセットにすればよかったと思っても後の祭り。アフターカーニバル。


きもち欲求不満の胃袋に水を流し込んで、昼休みの善処を約束する。油ものはキツイけど、ご飯をしっかり食べるから、ご勘弁ご勘弁、な。


ごちそうさまでした。