最近の立ち食いそばは頑張っている。
ゆで太郎は店内でそばをうってるし、なんなら嵯峨谷などは十割そばだったりする。安くておいしいのは、やはりうれしい。
しかし昔ながらの立ち食いそばというのも、また風情があるもので。茹で置きのややくたっとしたそばを温め直して出してくる、それがいい。
さて、駅前の独立系のお店。おばあちゃんが2人で店番というか、守り人のように佇んでいる。昭和のタバコ屋のような一体感ある絵面。
さて、今日はあまり咀嚼したくもないので、たぬきそばにしよう。サラサラとダシで揚げ玉を流し込むくらいがいいナ。
若いころ、たぬきそばを知らなかった。金沢出身の両親はうどんを食べることが多かったし、揚げ玉のことは「天かす」と言ってたっけ。
「美味しんぼ」でたぬきそば=天ぷらを揚げたときにできる天かすを使った清貧のそばと知るまでは、緑のたぬき=かき揚げそばだと思ってたナ。
さて、注文するや否や、おばあちゃんなりに手早く麺を茹で直す。その間こちらはセルフサービスの麦茶を注ぎつつ、席を陣取る。
ラックに入れられた雑誌を物色するうちに、たぬきそばの方〜と呼び出しがかかり、お盆を受け取りに行く。あっという間だな、そりゃそうか。
こちら見た目はいかにも関東のそばといった黒いつゆ。ひと口飲めば、かつお風味はほんのりと、みりんとしょう油のパンチのきいた好みの濃さ。
そばもコシなんていらん、という潔さ。栄養はある、それ以上この値段に求めるのかな、キミは? なんてそばに問われているような錯覚。
もちろん、これで大満足。もろもろの揚げ玉、シャキシャキのかいわれ、彩りよい刻みネギ。これらが織りなす様式美、小宇宙に心から安堵する。
食べるとあっという間なんだよな〜。ノスタルジーあふれるこの手のそば、街から消えてゆくのが先か、自分が枯れてゆくのが先か。ひと勝負だ。
テーブルを拭いて立つ鳥跡を濁さず。お盆をカウンターに下げて店を出る。持ち帰りのおにぎりコーナーには待ち客が。
コンビニではなく、ここでおにぎりを買うなんて、なんかほっこりするナ。今度はおにぎりもつけてみようかな。
ごちそうさまでした。