多くのアラフィフおじさんの心には、シャアが住まう。「若さゆえのあやまち」「坊やだからさ」「さらにできるようになったな」「まだだ、まだ終わらんよ」など。
あらゆる生活場面で、隙あらばシャアの言葉が胸をよぎる。一部クワトロ大尉の発言も混在していますが問題なし。富野節ともいわれる独特の言い回しは汎用性が高い。
「見せてもらおうか、冷やしたぬきの性能とやらを」。こちら相州そばは、冷やしたぬきが温たぬきより110円高い強気な価格で、久しぶりに心のシャアが呟きました。
お金のことをいうとイヤらしいけど、温そばより冷そばのほうが高いことが多い。茹で上げたのち冷たくしめて、専用の冷ツユで仕上げることを思えばさもありなん。
立ち食いでは温冷同価格も多いけど、+50円増しがなんとなく相場かな、と思っていたところに110円差ですから、期待は高まります。専用のツユが注がれて完成。
ワサビ、ネギは別添で、揚げ玉のほか、たっぷりのワカメ、のり、きゅうり、かまぼこが盛り付けられるなど、なるほど豪華。「見掛け倒しでなければいいのだがな」。
ワサビを少し溶いて、ツユをチラリと舐めれば、やや濃いめながらゴクゴク飲める好みのタイプ。朝だからか、そばも凛と角がしっかり立って、冷たいツユと相性よし。
揚げ玉は天かすといったほうがふさわしい湖池屋スコーンのような無骨なフォルム。ガリガリと歯ごたえがあり、そばと一緒に食べると、食感の違いがより楽しめます。
少し青臭いきゅうりが夏っぽさを演出して嬉しい。となりのトトロでサツキちゃんが食べていそうな爽やかさ。のりの風味も夏休みのお昼のそうめんを思い出させます。
「価格の違いが、味の決定的差ではないことを教えてやる」とか思っても、確かにハイレベルな冷やしたぬきであり、110円の価値は大いにある。シャア、降参です。
ズルズルと冷やしたぬきを食べるうちに体は程よく冷え、グラスの水を飲めばすっかりさわやかです。このおいしさは「冗談ではない」。おあとがよろしいようで。
ごちそうさまでした。