「蕎麦屋で一杯」は、大人の嗜みである。ビールで天ぷらを喰み、そば焼酎でそば味噌を舐め、日本酒でそばがきをチビチビかじる。
〆には、もりそばとそば湯もいいけど、かけそばのツユを飲んで酔い覚ましなんてのも悪くない。でも、残念ながらお天道様は高い。
午後の仕事もあるので、壁一面の銘酒の一升瓶に秋波を送りつつ、手元のメニューに目を落とす。丼ぶりとそばのセットがお得だな。
カツ丼、カレー丼、しらす丼、天丼。どれもおいしそうだけど、にわかにマイブームの山かけトロロ丼に、たぬきそばをつけるかな。
先日食べたラーメンは限定だったのだろう、すでにメニューになく、一期一会だったな。代わりの四万十産のうな丼がおいしそう。
ふとみれば、お隣は昼間っから瓶ビールを飲んでおり、コロナ禍が落ち着いたのだとしみじみ思う。夜の客足は戻ったのだろうか。
さて、うずらの玉子がかわいらしいトロロ丼をさじでパクリ。ダシの香り、トロロの野趣が感じられて、青さの風味もかぐわしい。
もったりと粘り気があり、ごはんが進む。ついつい飲むこむように食べちゃうけど、トロロはともかく、ごはん粒は胃によくないな。
壁のポスターに「新そば入りました」とあり、お楽しみのたぬきそば。ツユはあっさりなので、シンプルな味でそばがひきたつ。
もはや、そばというより味噌汁代わり。ざぶざぶごはんをかきこんで、ズズズッとそばをやっつける。新そばが泣き出す雑な扱い。
一方で、お隣さんは天ざるですか。天ぷらでビールをやっつけ、ざるでしめるわけだね。大人のそばの嗜み方、見習いたいもんです。
ごちそうさまでした。