ふと思う。よくもまあ、そばにカレーをかけようと考えたもんだ。今でこそ、町そば屋の定番メニューだけど、本格そば屋では見かけない。
きつね、天ぷらあたりと比べると種物の中でも邪道感が強い。調べるとカレー南蛮の日印同盟は明治時代に結ばれたらしく、その歴史は古い。
こちらのカレー南ばんは、スパイスがきいており、ツユはドロリとまではいかないトロリ。濃いめのそばツユとの相性は、言わずもがな抜群。
そばに絡むカレーのスパイス、甘いツユで煮えたネギ、歯ごたえのよい豚コマ。個性派揃いで、主役のそばはひっそりとたたずんでいる。
そば粉の香りなぞ忘れました。若いモンのやりたいようにやってもらうのが一番でさぁ。アッシは自分のできることをするだけでございやす。
などと勝手に脳がそばの擬人化を始める。無骨で、不器用で、情にあつい。でも組織の屋台骨を支える、古きよき明治男のような、そば。
なんだ、この妄想は。ふと我にかえり、苦笑い。ジワリとデコ汗をかきつつ、スパイスの海を堪能。丼ぶりを持ち上げ、ツユを半分ほどいただく。
ごちそうさまでした。