カレーライスとひと口に言っても、思い浮かべるものは、世代によってさまざまであろう。少なくとも、昭和のころナンカレーはほとんど見なかった。
カレー粉と小麦粉でつくる給食の黄色いカレー。母親がここぞとばかりに人参を入れる家庭のカレー。レトルトカレーなどはたまの贅沢だった。
令和のカレー界隈からみれば、思い出補正をかけなければいけない。カレー粉ではなく、スパイスの組み合わせを云々する市井の評論家も多い。
さてこちら、店員2人で目の行き届くくらいの小ぶりな店内は、レトロだけど清潔で、ウリは昭和のオムライス。そんな素敵空間のカツカレー。
まずはサラダでベジファースト。トマト、きゅうり、レタス、キャベツ。昭和のころなら十分にハイカラといえる、シンプルかつさわやかなひと皿。
そしてカレー。給食に比べれば茶色く、そのぶん深みがあって、辛さもグッと強い。スパイスの味もインド的なものではなく、いかにも洋食屋さんのカレー。
カツは当然の助動詞・べしの揚げたてサクサク。カリカリと口内に刺さるほどの衣の中には、キシキシ歯ごたえよい豚肉が。途中でソースをかけて味変。
スープもほのかな旨味でやさしく、カレーの刺激を上回る滋味に耽溺する。ご年配の夫婦ならではの、息の合った配膳、客さばきはおみごとのひと言。
しばらく休んでいて心配だったけど、もう少し、舌と胃を楽しませてほしいな。そんな客のワガママを胸に秘めつつ、ひと粒残さずキレイに完食です。
ごちそうさまでした。