田舎ものだったので、東京に来て初めて利用する業態がたくさんあった。ファミレスもそのひとつで、地元にもあったけど、学ランで行くところではなかった。
平成初期の私大文系大学生。バブルの残り香を感じつつ、まさか就職氷河期になるなんてツユほども思わず、お気楽極楽に過ごして、毎日が日曜日だった。
で、普段はマックやカップ麺で過ごして、たまにファミレスで贅沢をした。ガストはまだ身近になくて、すかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズあたり。
家では食べないような、華やかな洋食メニューにしびれる、あこがれるぅ。そんな若さゆえ、和食のファミレスが増えたときは度肝を抜かれた。
実家で出てきそうなメニューをわざわざレストランで? そんな疑問をもったけど、今やお茶を自販機で買う時代、和食ファミレスも十分に機能するのです。
法事などで親戚が集まったり、オジサンの草野球の反省会だったり、自分のような中年のランチだったり。で、うどんに定評のある味の民芸にてちゃんぽん。
味の民芸は、季節ごとのフェアが素晴らしすぎて、なかなかレギュラーメニューに目が向かない。そこをグッと堪えて、あえてのちゃんぽんうどん。
注文用のタブレットには、延々とうどんの手延べ風景がローテーションされる。これがずっと見ていても飽きない。むしろ、胃の期待感が増幅してゆく。
さて、ミニ味噌かつ丼を従えて、威風堂々とやってきたちゃんぽん。ひと口スープを飲めば、海鮮の鮮烈な風味が、喉だけでなく鼻腔を駆け抜けていく。
ここに、手延べうどんがよくからむ。手延べならではの不均一さが食感のアクセントとなってたまらない。野菜も、海鮮も、すべてが渾然一体となった旨み。
ミニ味噌かつ丼。ひと口かつは揚げたてサクサクで、漆黒の味噌ダレが、海鮮スープとは対極にある甘ったるさでおいしい。量もちょうどよくてニンマリ。
うどん、海鮮、かつ、ごはん、野菜、スープ。オールスターがそれぞれ輝きを放つのがたまらない。なるほど、これは家ではやすやすと出せませんな。
ファミレスも24時間営業をやめるなど、昔とは変化しているようで、時代の流れを感じます。懐かしさよりも、今どきの付き合い方していこう。
ごちそうさまでした。