鴨は渡り鳥で、冬にシベリアから日本にやってくる。ゆえに長旅の疲れがとれ、脂がのりはじめる年末年始が鴨の旬だとか。なるほど、戻り鰹みたいなもんか。
確かに鴨鍋や鴨南蛮は冬の風物詩だし、鶏とは異なる脂の旨みは思い出すだにヨダレが出る。こちらのそば屋さんも、冬メニューに衣替えで鴨団子汁の登場。
つけ汁ではありません、との但し書があるように椀物としての鴨団子汁。やってきたお椀には、澄んだダシに鴨団子汁やキノコがたっぷり入っています。
ダシをひと口飲めば、とにかくおいしい。丁寧にとられたダシというのは、どうしてこんなにしみるのか。浸透圧が体液と同じなのではないか、などと唸る。
非のつけどころのない滋味を楽しむ。ユズ皮の香り、キノコのダシ、青菜の風味、ネギの甘みなど、すべてが調和しています。そして待望の鴨団子をパクリ。
ほろほろとした肉質は、噛み締めるとキュッキュとして、軟骨のコリコリも嬉しく、舌の上を文字通り転がす。椀に浮かぶ黄金色の鴨の脂がキラキラしてます。
おっと、メインはざるそばでした。濃口のツユに少しつけ、一気にすすりこめば清冽さが際立ちます。ネギ、ワサビ、おろしなど薬味も順に楽しんじゃう。
鴨汁とそばを交互に楽しみ、ともに七味で味変して、切れ端1本残さずにおいしく完食。最後はぽってり濃厚なそば湯を楽しんで、水っ腹を抱えて店を出る。
ごちそうさまでした。