「野菜を食べなさい」
若い頃、一人暮らしの私に母親が電話口で繰り返す。
「野菜を食べなさい」
「野菜を食べたい」
その頃の母親の年頃になってしみじみわかる。
「野菜を食べたい」
ああ、あれは親心であるし、母親自身の欲求でもあったのだなあ。
肉でカラダをつくり、脂を潤滑油とした年頃は、とうに過ぎ去ったということです。
さて、肉野菜炒め定食。こちらのお店は季節のお野菜というか、その日その日で入っている野菜が違っていて、いつきても楽しめます。よくいえば大らか、悪くいえばアバウト。ま、個人店の良さがにじみ出ていますよね。
もやし、青菜、白菜、人参、玉ねぎ、おっキクラゲも入ってる。「肉」野菜炒めなので当たり前ですが豚コマも入っており、濃いめの味つけで、ご飯が進むこと、進むこと。
野菜、かむかむ。
ご飯、かむかむ。
大根のみそ汁で口のなかを洗い流す。
豚肉、かむかむ。
ご飯、かむかむ。
キュウリの酢の物で口をさっぱりさせる。
漬物、かむかむ。
ご飯、かむかむ。
…豚肉以外は、野菜だらけですが、ひたすらに咀嚼したのがよかったか、すっかり満腹です。
キレイにたいらげたあとは、甘味処らしい渋い粉茶をズズズと飲み干す。オレ、日本人だなーとしみじみ思うのも歳くった証拠ですね。
そう、私も娘に繰り返す年頃なのだ。
「野菜も食べなさい」
ごちそうさまでした。