つけ麺はぬるい。
正確にいうと、熱々のスープに、キュッと冷やされた麺をつけて食べるうちに、ぬるくなる。そんな印象で、かれこれ何年も食べていません。
店員さんに頼めば焼き石を入れてくれ、再び熱々のスープを楽しめます! なんて店もありますが、混んでいるとそれを尻込みする小市民です。
さて、私は違いますが猫舌の人もいるでしょう。コンビニなどでは常温のドリンクも売ってます。
「お酒はぬるめの燗がいい理論」でいえば、ぬるいつけ麺もありなのではないか? カレーせいろそばを食べながらそんなことに思い至ったこの頃。そうと決まれば、さっそくつけ麺屋さんへ足を向けるのが、アラフィフ男の稚気ですね。
券売機でひとしきり検討して辛つけ麺を選択、野菜も食べたいな~なんてボタンをポチっていると1000円を超えました。
やはり4桁を超える食事は、ちょっとしたイベント感のある、ごちそうです。いや、ごちそうであって欲しい。朝そばなら2日ぶんだぞ。ごちそうになぁれ。
さて、こちらは人気店なので大にぎわい。
カウンターに水が置かれて、あちらの席へどうぞ、と。なるほど、バラバラに座られたら客の回転が悪くなるから、奥から詰めていくんだな。
ほどなく食券が回収され、手持ち無沙汰で店内をひとしきり眺める。観光地に近いからか学生さんも多いな。春休みか、修学旅行か。楽しそうだ。
私のようなサラリーマン、工事途中の職人さん、外国からの観光客など、店内は熱気にあふれてます。
そうこうしているうちに、つけ麺が到着。まずは麺をかき混ぜて辛子を均等にまぶす。こいつぁ思った以上のボリュームですね。
まずは、麺をスープにどっぷりつけて食べてみる。濃厚な味をまとって実においしい。
次に、ちょっぴりだけつけて食べる。麺の味がしっかりわかっておいしい。
なるほど、こうして自分好みの味で食べられるのがつけ麺の魅力なのかもしれないな。そばつゆだと、どっぷりつけられない極少量のお店もありますし。
麺、麺、もやし、麺、もやしといったペースで食べ進めると、やはりスープはぬるくなります。
お昼時でてんてこ舞いの店員さんに焼き石を頼む勇気もなく、そのままぬるめの燗、もといスープを楽しむ。ありっちゃ、あり。
焼き石を入れるところをテレビで見たことがありますが、イベント感があって楽しそうでした。でも周りのお客さん、誰も頼んでないんですよ。小市民としては、もちろん、頼みません。
並盛りとはいえかなりの量をモグモグと食べ終えると、つけ汁は麺からこぼれ落ちた辛子で真っ赤っか。
逡巡するもそこはお作法に則り、卓上のポットからスープを注いでズゾッとのんでみる。滋味あふれるそば湯と違って、塩分で刺し殺されそうな味ですが、だからこそおいしい。
全部飲んだらあかんやつとわかっているので、さらに薄めながら半分ほどいただく。水の入る場所を残しておかないと、口が痛いくらい、つらいからい。
最後にグラスの水をゴクリ、あー甘露、甘露。
ごちそうさまでした。