今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 256)たぬきそば

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チェーン店ならいざ知らず、おしなべてそば屋の夜は早い。朝が早ければ夜も早くなるのは、まあ理解できる。そばの鮮度の問題もあるだろう。


こちらの立ち食いの老舗も、19 時には店仕舞い。気忙しかったであろう昼間とは打って変わって、閉店近いせいか、のれんをくぐると客は私一人。


いつもなら天ぷらが並ぶだろうショーケースも閑散としてるナ。そんなの関係ねぇ、とばかりにたぬきそばを頼めば、そばが手早く茹で直される。


天かすをトングで徐につかみ入れ、ネギをひとつまみ。オタマでアチアチのツユを注ぐと、我がたぬきそばの御成りです。箸をパチンと割る。


こちらのたぬきは天かすと呼ぶのがふさわしい。どの天ぷらの一部だったかはわからないけど、キシキシ歯応えよく、ツユをじわじわ吸い込む。


あっついツユで煮え煮えのネギも味わい深い。すべての基本となるツユは、醤油、みりん、ダシがキレイな三角形を描いているようなバランス。


カラカラと引き戸が開き「げそ天ある?」とのオジサマの声。売り切れと聞いて立ち去ったけど、よほどげそ天が食べたかったんだな。


AM が淡々と流れる店内。店仕舞いも近く、店主がじゃぶじゃぶ洗う音が響く。淡々と、粛々と。しかし、生き生きと小ぶりな一杯を食べ終える。


老舗のツユの魔力につい飲み干しそうになるけど、塩分を考えて自重する。今度はげそ天を食べようかな。売り切れなら、たぬきでいいけどサ。


ごちそうさまでした。