最後の晩餐に何を食べたいかと聞かれたら、すかさず卵かけご飯と答えます。おふくろの味、妻の手料理、娘の手作りお菓子よりも、卵かけご飯。
卵は新鮮ならばブランドでなくていいね。醤油を加えて軽くかき混ぜておいて、炊き立てご飯をよそい、中央に窪みをつくって、タラリ流し込む。
黄身のコク、白身のトロミ、醤油の香り。それらが銀シャリと渾然一体となって、サラサラとかき込んでは、鼻に抜けていく旨みまで堪能する。
で、そんな卵かけご飯の縁戚と思しき玉丼。カレー丼、カツ丼、親子丼、開化丼、ずらり並んだそば屋のご飯ものでは最安値。だが、それがいい。
シンプルだけに、手早く登場する玉丼。そばつゆで半熟に煮立てられた卵は見目麗しく、海苔の香りとも相まって、食欲がかきたてられますナ。
まずは、ひと口パクリ。甘いつゆの味がしみる。黄身と白身の食感の違いも楽しく、歯が要らないどころか、ストローで飲めそうなふわふわ感。
もりもり食べれば、もっちりのかまぼこがコンニチワ。木の葉丼を名乗らないのが奥ゆかしさ。シャキシャキの玉ねぎの食感も嬉しいアクセント。
味のしみた上層、つゆダクの下層、比較的白いままの中層。地層別のご飯の味わいもまた、楽しからずや。初めて食べたけど、大当たりですね。
七味をパラリとふれば、途端につまみになりそうな大人風味。香の物で舌を整えて、ひと粒残さずご飯を食べ尽くす。食後の熱い番茶も嬉しいね。
卵かけご飯の上位互換と思ったけど、卵かけご飯が釜玉うどんなら、玉丼は味噌煮込みくらい方向性が違ってました。でも、玉丼もまた食べたい。
ごちそうさまでした。
★しばらくは、孤食のグルメ&お蔵出しです。