日本人は謙譲が美徳とされる。つまらない物ですと贈り物をして、うちの愚妻と紹介して、儲かりまっかと聞かれればボチボチでんなと答える。
しかし最近は押しの強い、クセの強いネーミングの店も多い。俺の◯◯とか、高級食パン店のアクの強さなどが印象に残る。行ったことないけど。
さて、こちらは海鮮丼専門店の自信作。絶品と名乗るからには、よほどの裏づけがあるのだろう。実際問題、お値段も4桁で、こちらも身構えて注文。
やってきた丼ぶりを眺めるに、気分は北海道旅行。「北海」というのは、地域としての「北の海」ではなく、「北海」道のことを指すのではなかろうか。
小皿にワサビ醤油をつくり、ザッと回しかけてしまう。どこから食べようか、どれを食べても正解と思える、ツヤツヤした海鮮たち。ええい、ままよ。
初手はホタテ。スウと歯がとおり、醤油をまとって甘みがよくわかる。ご飯を食べれば、そりゃあ合うの合わないのって、合うに決まっている。
脂がおいしいサーモン。プチプチ弾けるいくら。トロリと舌で消えるウニ。風味のよいカニ足。このうちロシアにどれだけ依存しいてるものか……。
整然と美しかった盛り付けも今は昔、混沌と化した丼ぶりを持ち上げ、ザッとかきこむように食べれば、ワサビだまりがあったのか咳き込みそうになる。
マスクが手離せないこのご時世、裸顔で咳き込むなぞご法度。お茶で口中を洗って耐え忍ぶ。ともあれ、名前負けしない逸品で、贅沢なひとときでした。
ごちそうさまでした。