チェーン店の勃興と隆盛により、どこでも安心して食事ができる安心感が得られた。でも、東京近郊はどこも似たり寄ったりの金太郎飴のような駅前になった。
さて、再開発して久しい府中駅前。綺麗なビル群の狭間に、競馬場のある街ゆえの居酒屋などが連なり、個性はそれなりに残っている。大国魂神社もあるしね。
こちらは再開発を生き抜いた立ち食いそば。平日は通勤客、週末は競馬客のお腹を満たす地元麺。久しぶりに来たけど、お値段もそれなりに上がっているな。
店名を冠した元禄そば、愉快な名づけのだるまうどん、物珍しい揚げ餅そば。個性あふれるメニューは見ているだけで楽しいけど、あえてカレーそばを選ぶ。
こういう立ち食いそばのカレーはおいしいに決まっている。スパイスの個性というより、カレー粉の総体といった、やわらかな辛みとダシのコクがたまらない。
食券を提出してセルフの水をくんで、壁に向かったカウンターで待っていると、元気なお姉さんが「お熱いので、お気をつけて下さ〜い」と配膳してくれる。
小ぶりな器はトロリとしたカレーソースで満たされ、食べる前から当たりの予感。熱具材は玉ねぎと小さな豚肉、まずはレンゲでカレースープをごくり。
うん、やさしい。そばつゆに溶け出す前の濃厚なソースは、ソースをひと垂らししたくなる味わい。そばを持ち上げれば、カレーをまとって少し重い。
茹でおきのそばだけど、カレーのパンチ力をまとえば言うことなし。ざっかけないツユとの相性は感動すら覚え、まるで答え合わせのようにおいしい。
七味をふれば香りがたって箸が止まらない。とはいえカレーがはねないように最新の注意を払う。冬のサービスエリアで白い息を弾ませながら食べたい味です。
塩分とやらを気にしてツユは飲み干さず、いくらか残す。朝晩肌寒い季節だけど、やはり、カレーそばは大正義ですね。お腹をさすりつつ、店を出る。
ごちそうさまでした。