もりそばを好むのは「ツウ」なのに、かけそばを食べるというと、どこか哀しい色やねん。かけそばは、ダシ、カエシ、そばの味がよくわかると思うんだけど。
「安くて、うまい」立ち食いそばのコンセプトは、我が人生とも通じる主戦場なので、ツウと呼ばれたいわけもなく、純粋にかけそばを再評価したい。
そんなかけそばの旅パート4として、豊しまを選ぶ。ガツンと大きな肉そばが主力のこちら、よくみるとメニューにかけそばがない。これは盲点でした。
かけそばの魅力を唱えつつ肝心の自分が品揃えを知らず、結果としてかけそばを軽んじていたと気づく。認めたくないものだな、初老ゆえの過ちというものを。
ともあれ、立ち食いでメニュー外を頼むほどヤボではない。代替メニューを刹那で考える。重要なのはツユの味が堪能できること、食感に影響がないこと。
主力の肉そばは本日は論外。きつねは油揚げの咀嚼が必要。玉子ではツユが薄まってしまう。比較勘案して、たぬき。揚げ玉の油が滲み出る前に食べるのだ。
食べ物の魅力を食べ物で例えるのはよくないけど、こちらは立ち食いそば界のガッツリ系、ラーメン二郎といえる。有名な厚い肉そばのボリュームは圧巻です。
具材に負けじとツユもパンチが強く、ダシも香るけど、カエシも濃い。化学調味料の有無は知らんけど、漆黒のツユを夜空に例えれば、たぬきが出てきそう。
まずはそばをズルズル。湯通しされたばかりでひどく熱い。ツユをちょうどよい塩梅でまとい、口蓋が熱を帯びてくる。ここで丼ぶりに口づけてツユをゴクリ。
原始の海のような塩分濃度の高さは、決して上品とは呼べないけど、体のことを考えなければ毎日食べたい好みの味。七味をかけて、ズルズル食べてゆく。
かけそば気分を堪能するものの、当たり前に揚げ玉も口に流れ込んでくる。やがてツユに油が溶け出してコクが加わり、かけそばではない化学反応が起きる。
種物を食べてもらい、利益率を上げたい店側の気持ちはよくわかる。「安くて、うまい」をこれからも味わうために、各店を食べ支えねば(勝手な使命感)。
ごちそうさまでした。