そばは江戸時代のファストフードである。ところが長く歴史が続いたゆえに、格式ある老舗がノレンをつなぎ、ニューウェイブ系が勃興するなど、進化を遂げている。
ちょうどファストフードの現代代表であるハンバーガーに本格派が出てきた構図に似ており、やはり歴史は繰り返すのだ。ともあれ庶民の味であることに変わりはない。
ファストフードだからといって、すなわちジャンクというわけでもなく、そば自体は栄養価も高く、立派な救荒作物である。ただし、本日はジャンク寄りのカップそば。
以前食べたとき、インスタントをはるかに超えるクオリティに感心した覚えがある。別に生麺がエライわけではないが、そんじょそこらの立ち食いに負けないおいしさ。
冷蔵庫にあった生食期限切れの玉子を入れてお湯を注ぐ。冷たい玉子を入れたので、5分より気持ち長く待ってからフタを開ければ、かき揚げと玉子の対比が美しい。
ツユは、魚、椎茸、昆布など方向性の異なる旨みのパレードが香り高く、カエシがうまくまとめている。そばをすすれば、ややボソボソながら角が立ち、文句なし。
かき揚げは、目隠しされたならカップ麺の具とはわからないクオリティ。玉ねぎはしっかり甘く、下半分はしっとりとツユを吸っており、高いレベルでバランスがよい。
オリジナルトッピングの玉子は、それなりに存在感を発揮するものの、玉子下のそばの戻りが悪くなり、やや食感を損ねる。でも、黄身のまろやかさは全体をまとめる。
生食期限切れなのに半熟でよいのだろうかと疑問に思いながらも、そばと黄身のコラボをしっかり楽しむ。改めてファストフードとしてのそばの底力を感じる一杯でした。
ごちそうさまでした。