自分が店を開くとして、何屋さんにするだろうか。感情が顔にモロに出る自覚があるので、客商売向きではない私ですが、思考実験でそんなことを考えるときもある。
好みの本だけを置いたセレクトショップ、袋ラーメンを忠実につくる店、子どもに勉強机を用意するだけの塾、いろいろ考えてみるけど、サラリーマンには如かない。
そんな私が憧れるのは、あだち充の名作タッチに登場した南風のような喫茶店。チェーンではなく、店長である自分の裁量があって、南ちゃんみたいな娘に恵まれたい。
で、カレーを出すのだ。市販のルゥを用いながらも隠し味が味の決め手。な〜んて夢想しつつカレーを待つ。仕入れ、仕込み、調理、接客、経理出納。…私には無理だ。
サラリーマンとして目の前の仕事すらこなせているか怪しい私に、自律を求められる自営業はとうてい難しいな。そんな結論の出るころ、あいがけデルタカレーの到着。
まずライスの上にのるにんじんのピクルスを喰む。しっかりとした歯ごたえながら、さわやかな酸味、野菜の甘みがわかる。スープを飲んだら、いよいよカレーです。
手前はトマトカレーかな。サフランライスを崩して、カレーにまぶしてパクリ。しっかり辛いのに、スパイスの秘法で深みもあり、改めて自分には作れないと思い知る。
ドライキーマは、スプーンでいくらか口に頬張り、追ってライスを食べる。キシキシと食感を楽しみ、肉からしみ出る旨みやら辛みを味わう。味の決め手は何だろうか。
味はもちろん、彩りといい、栄養バランスといい、やはりカレーハウスのカレーはおいしい。勝手に敗北感を覚えつつ、いつもより少し声をあげて厨房に声を届ける。
ごちそうさまでした。