梅雨前線が北上するころ、冷やし麺が町を賑わす。冷やし中華始めました、のフレーズは有名になったけど、冷やしそば・うどんは特に告知もなく始まっているのだ。
ここでいう冷やしは、いわゆるぶっかけであり、ざるそばなどつけ汁が冷たいものではない。町そばに冷やしが出ると、いよいよ夏だなと思う。その前に梅雨だけどね。
こちらの冷やしは、たぬき、きつね、むじなの3種。たぬき、きつねのいずれも選びがたく贅沢にむじなを選ぶ。「酢」のきいたつゆです、との但し書きに唾を飲む。
やってきたのは、お皿に盛られた瀟洒なひと品。揚げ玉、お揚げは当たり前として、きゅうりとナルトが嬉しいね。別添のネギをつゆに漬け込み、ワサビを少し溶く。
ここで箸を舐めれば、なるほどつゆは酸っぱい。揚げ玉はしっとり、キシキシとした歯ごたえで、お揚げは酸味を帯びてなおしっとり甘い。あゝ今年も暑くなるのかな。
軽く全体を混ぜてそばをズズズと。濃いめのツユが酢のキツさを丸くしており、冷たい喉越しで体温が下がる。きゅうりの緑が見た目だけでなく、味わいも涼しくする。
しみじみ、幸せ。高いものでなくとも、季節ものを食べると、健康で1年過ごせた自分へのごほうびだと思う。皿に残るそばの切れっぱしを丁寧につついて、箸を置く。
ごちそうさまでした。