長い人生、食事が面倒なときもある。食欲がないわけではなく、ちょっとしたスランプというか、手間をかけたくない。そんなときは、丼ぶりものをかきこむに限る。
例えば麻婆豆腐定食ならレンゲで麻婆を食べ、箸に持ち替えて白米を頬張る。再びレンゲに持ち替えスープを飲み、箸でサラダを頬張る。いつものルーチンがしんどい。
その点、中華の丼ぶりはシンプルである。レンゲでガブガブいただき、返す刀でスープも飲んじゃえる。野菜をとりたいけど中華丼は咀嚼が面倒なので、麻婆豆腐丼だ。
基本的に、どこを食べても同じ味。挽き肉の旨み、豆板醤の辛み、豆腐の滋味あふれる甘み。これらを適当に取り上げた白米とともにガブガブ食べてゆく快感たるや。
麻婆豆腐が全面にかかっているので、カレーライスのように、白米をピッタリ食べ終えるための調整がいらない。何も考えず、口が辛ければスープや麦茶を間にはさむ。
もはや、無の境地である。皿の上の麻婆豆腐が減るごとに、おなかにたまっているはずだけど、そこに興味がない。食事を楽しまないわけではなく、ひたすら無の境地。
さすがに食べ終えるころには満腹感を覚えるし、心地よい辛さにジワリと汗をかきハンカチでおでこを拭う。あまり健全ではないので、早くスランプを脱出したいな。
ごちそうさまでした。