今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 593)中華丼

 

 

中華料理の本場中国に中華丼はない。わが国発祥のいわゆる和式中華だけど、もはやその存在に違和感はない。むしろ街中華の花形ともいえるポジションではないか。

 

初めて中華丼を食べたのは、高校の頃である。両親が帰省する際、部活の関係で居残りの私に、食費として一万円を置いていった。3日分にしてはかなりの大金ですね。

 

お釣りは返せよとの意図だったのだろうけど、バカな私は速攻で古本屋に行きルパン三世を買い揃えた。あとは野となれ、山となれ、手元に二千円あればなんとかなる。

 

ディスカウントストアへ行き、まずはコーラを確保する。米は冷凍があるから、丼ぶりのもとを買えばなんとかなるでしょうの精神。その1つがグリコの中華丼のもと。

 

トロリとした餡に、それなりの野菜、うずらの玉子が嬉しくて舌で転がしてから食べたっけ。もちろん、帰ってきた両親は呆れかえり、その次の食事代は減額された。

 

年をとると、そんなくだらないことを思い出す。ともあれ、こちらは街中華による本格派中華丼。目玉焼きの黄身が固まる前に突き崩し、トロリと旨みを押し広げる。

 

レンゲをざぶざぶと差し込み、具材を確認しては口に入れる。中華ダシのきいた餡が舌を撫でるように広がり、野菜の歯ごたえとともに白米を食べてゆくのは快感です。

 

白菜、もやし、キクラゲ、玉ねぎ、しめじなどの草食系だけでなく、ナルト、叉焼の肉食系もバランスよく配されて、無理のない布陣です。スープもおいしいのよね。

 

あのとき買ったルパン三世は、昔の古本屋らしく丁寧にハトロン紙に包まれていたっけ。まだ実家の本棚の肥やしになっているけど、そのうち、処分するのだろうな。

 

読み捨てられる雑誌のように、なんて歌詞があったけど、電子化の昨今、書籍を手元に保管するのも贅沢ですよね。いろいろ悩ましいなあ、と思いつつおいしく完食。

 

ごちそうさまでした。