今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 942)天ぷらそば

 

立ち食いそばが好きである。気軽にふらっと立ち寄り、気分に合わせて季節ごとのメニューを楽しむ。店ごとに、食券や現金払など作法が異なるのがドキドキするけど。

 

しかし、最近は純粋な立ち食いは少なくなり、スツールやテーブル席を揃えている店が多い。そうすると、立ち食いそばと街そばの境界線はどの辺りにあるのだろうか。

 

チェーンである、老舗であるなど主張はあろうけど、私のなかの境界線は、かき揚げの有無である。例外は当然あるけど、私の経験則からはおおよそこれで区分できる。

 

ゆえに、街そば店で「天ぷら」と頼めば、まず海老天そばがやってくる。もりそばに盛り合わせがつくこともあるけど、それは豪華な例外です。で、天ぷらそばを待つ。

 

手持ち無沙汰に、壁に貼ってある「晩酌セット」の詳細を確認すれば、お酒、おつまみに〆のもりそばがついて1200円。なんとまあ豪気なことで、うらやましくなる。

 

ビール中瓶orそば焼酎or日本酒

板わさorにしん棒煮 or鶏皮の焼きor鶏肉の抜きor豚肉の抜き

 

「抜き」というのは、ツユと具のみで、そばが「抜き」の丼ぶりですね。うーん、惹かれる。大上段に構えた老舗でなくとも、こうした街そばのメニューでいいのよね。

 

そんなことを考えるうちに、天ぷらそばの御成り。まずはツユを飲めば、相変わらずみりんのきいた甘めのやさしい味。七味を多めにふってそばをズルズルすする。

 

しっかりと角のたったそばは、凛としておいしい。新そばはまだだけど、香りもツユに負けていない。三つ葉の香りも加わればそばっ食いとしては、言うことなしです。

 

海老天をひと口かじると、思ったより衣が厚く、海老にたどりつけず。でも、ぼってりした天ぷら粉がツユをよく吸っておいしい。ふた口目で主役の海老にたどり着く。

 

存在感のある海老はブツリと歯ごたえよく口で弾け、よく噛まないと飲み込めない。そばをすすり、海老をかじり、それを繰り返すうち、尻尾まで食べてしまいました。

 

そういえば、立ち食いと街そばの境界線として、鍋焼きうどんの有無も挙げられるかな。回転を重視する立ち食いや、格式を重んじる老舗にはないよね、鍋焼きうどん。

 

鍋焼きうどんって専門店もないし、街そばならではのメニューだよなぁ。個人店の苦境はコロナ禍で加速したけど、心の落ち着く街そばは、長く続いて欲しいものです。

 

ごちそうさまでした。